公務員試験 H24年 国家一般職(教養) No.37解説

 問 題     

次のA B Cはある思想家の著作(共著を含む)からの抜粋とその人物について述べた文章である。人名の組合せとして最も妥当なのはどれか。

A.『倫理は私がすべての生きんとする意志に自己の生に対すると同様な生への畏敬をもたらそうとする内的要求を体験することにある。これによって道徳の根本原理は与えられたのである。すなわち生を維持し促進するのは善であり生を破壊し生を阻害するのは悪である。』

著者はアフリカに渡り現地で医療活動に従事し「密林の聖者」と呼ばれた。その思想は人間の倫理的な立場を人間だけでなくすべての生命を敬いすべての苦しむ生命を助けようとつとめることにあるとするもので生命の尊重をすべてに優先する課題であるとした。

B.『実存主義の考える人間が定義不可能であるのは人間は最初は何ものでもないからである。人間はあとになってはじめて人間になるのであり人間はみずからがつくったところのものになるのである。』

著者は哲学に加えて小説・評論の発表や政治運動にも活躍した。著者によれば実存としての人間は何ものとも決められないままこの世に存在しそののちにみずからを未来の可能性にむかって投げかけ自分が何であるかを自由につくりあげていく存在であるとしてこのような人間のあり方を「実在は本質に先立つ」と表現した。

C.『じつのところわれわれが胸に抱いていたのはほかでもない。何故に人類は真に人間的な状態に踏み入っていく代りに一種の新しい野蛮状態へ落ち込んでいくのかという認識であった。』

著者はフランクフルトの社会研究所で研究したがナチスのユダヤ人公職追放によって英国に亡命戦後は帰国して同研究所の再建に参加した。また共著『啓蒙の弁証法』において野蛮から脱出して文明を築き上げた人間の理性がまさにその自然を支配しようという努力によって野蛮に逆戻りすることを説明した。

  •    A       B     C
  1. シュヴァイツァー サルトル フロイト
  2. シュヴァイツァー サルトル アドルノ
  3. シュヴァイツァー ユング  フロイト
  4. ハーバーマス   ユング  アドルノ
  5. ハーバーマス   ユング  フロイト

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

B が「実存主義」がキーワードで、サルトルです。これを確実に判断したい問です。すると正解は 1 or 2 です。 C については、フロイトであれば、無意識の提唱、心理学の祖といったキーワードが出てくるはずです。従って、正解は 2 と判断できます。

A のシュバイツァーさんは、ドイツの哲学者で、社会学系の人です。ハーバーマスさんは、道具的理性がコミュニケーションの源となっていて、対話的理性を抑制している。公共圏を取り戻そう、といった内容がキーワードです。ユングさんは、フロイトの弟子さんです。集合的無意識 などがキーワードです。

以上より、A シュバイツァー、B サルトル、C アドルノ です。

正解は 2 です。

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