公務員試験 2019 (R1) 年 国家一般職 (農学) No.27 解説

 問 題     

病虫害の予防と防除に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.真性抵抗性とは、病原菌の増殖を完全に抑える抵抗性のことで、多数の微動遺伝子に支配される。また、特定の病原体レースに対し発現する抵抗性のことを量的抵抗性という。

2.植物が生産する低分子の抗菌性物質のうち、感染前に抗菌力を示す濃度で存在するものをプロヒビチン、感染後に生合成されるものをファイトアレキシンといい、前者は静的抵抗性、後者は動的抵抗性に関わる。

3.抵抗性を有する台木に穂木を接ぎ木する方法は、土壌病害に対する効果的な物理的防除法である。キュウリやメロンのつる割れ病の防除には、台木としてユウガオが用いられている。

4.土壌消毒などの人為的な処理によって土壌病害の発生が減少した土壌を発病抑止土壌という。熱を利用した土壌消毒には、土壌に熱水を直接灌水する温湯浸漬法や地中に蒸気噴出管や加温装置を埋設する蒸気消毒法がある。

5.黄色灯は、アブラムシの飛来を抑制する。また、紫外線の除去により菌糸の伸長が阻害される糸状菌が多い。施設栽培ではこれらの作用を利用した病虫害防除が行われている。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

選択肢 1 ですが
真性抵抗性は、質的抵抗性 あるいは 垂直抵抗性とも呼ばれる「品種レベルで現れる抵抗性」のことです。「病原菌の増殖を完全に抑える抵抗性」のことではありません。また「微動遺伝子」は、量的抵抗性を支配する遺伝子です。選択肢 1 は誤りです。


選択肢 2 は妥当です。
プロヒビチン、ファイトアレキシンについての記述です。


選択肢 3 ですが
抵抗性台木を用いるのは土壌病害に対する効果的な「耕種的防除法」です。病原体に対して熱や光を利用して防除する「物理的防除法」ではありません。選択肢 3 は誤りです。

記述後半は妥当です。
つる割れ病の防除に、台木としてユウガオやカボチャが用いられます。


選択肢 4 ですが
発生抑止土壌は、特別な病害対策 (農薬散布など) をしていないにも関わらず、病害発生が少ない土壌です。「人為的な処理によって土壌病害の発生が減少した土壌」ではありません。また、土壌に熱水を直接灌水するのは「熱水土壌消毒」が妥当です。温湯浸漬法は、種子の消毒法です。選択肢 4 は誤りです。


選択肢 5 ですが
黄色灯は、アブラムシの飛来を「誘引」します。抑制ではありません。選択肢 5 は誤りです。

ちなみに、多くの菌類(糸状菌)の胞子形成には、波長370nm 以下の紫外線が必要なことが知られています (H27 no27 選択肢 5)。この性質を利用して、紫外線除去フィルムでハウスを被覆することにより病気の発生や拡大を防ぐことができます。また、波長 280 ~ 315 nm の紫外線を一定時間照射することでも、病気予防効果が見られます。


以上より、正解は 2 です。

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