公務員試験 2020年 国家一般職(行政) No.3解説

 問 題     

政党の機能と組織に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.E.バークは,政党とは社会の中の特定の集団の利益を図るための組織であり,社会全体の利益を推進することはないと考えた。また,彼は,政党の構成メンバーの考え方がしばしば一致しないことを指摘し,政党とは私的利益にしか関心を持たない派閥や徒党と同じであるとして否定的に捉えた。

2.M.ヴェーバーは,19 世紀に各国の政党が貴族政党から近代組織政党へと発展を遂げ,さらに20 世紀に入って近代組織政党が名望家政党へと変化しつつあることを指摘した。このうち名望家政党とは,カリスマ的なリーダーシップを持った名望家がマスメディアを用いて有権者に直接訴え,支持を集める政党を指す。

3.R.ミヘルスは,20 世紀初頭にドイツの社会民主党について分析を行い,この政党が民主主義を掲げているにもかかわらず,組織の内部では一握りのエリートが支配している実態を明らかにした。このことから彼は,あらゆる組織において少数者支配が生じるという「寡頭制の鉄則」を主張した。

4.M.デュヴェルジェは,20 世紀初頭に,欧米諸国で大衆政党と呼ばれる新しい組織構造を持った政党が出現したと指摘している。大衆政党は,この時期に新しく選挙権を得た一般大衆に基盤を置く政党で,従来の政党に比べて極めて分権的な組織であるとされる。大衆政党の典型例に,米国の民主党が挙げられる。

5.O.キルヒハイマーは,20 世紀前半に,西欧諸国で社会主義政党やファシズム政党が台頭する状況を観察し,これらの新たな政党を包括政党と類型化した。包括政党は,極端なイデオロギー的主張を用いて大衆を動員すること,また多様な利益団体と接触することにより,社会の広範な層から集票する点に特徴がある。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
バークによれば、政党は、国家利益の促進のために、ある共有原理に基づいて統合する人間集団であり、単なる一時的利害で結びついた派閥とは区別されます。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
ウェーバーによれば、政党は貴族政党 → 名望家政党 → 近代組織政党 へと発展を遂げました。名望家政党とは、財産や教養を持つ名士ら(名望家)の個人的つながりによって形成される政党です。幹部政党ともいいます。「近代組織政党が名望家政党へと変化」ではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
ミヘルスの寡頭制の鉄則です。

選択肢 4 ですが
大衆政党は極めて組織的であることが特徴です。そして、近代組織政党は集権的な性格を有するとされています。分権的といわれるのは、名望家政党です。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
O.キルヒハイマーのいう包括政党は、「特定の社会階層や地域,宗教などに焦点を絞らず,有権者全体の支持を取り付けようとする政党」です。「極端なイデオロギー的主張を用いて大衆を動員」ではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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