問 題
国際的な人の移動に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。
1.エスニシティという用語は,1990 年代以降に広く使われるようになったとされる。エスニシティは,人々の所属意識に関係なく,言語,地域などの文化的指標を用いて客観的に定義できるところに特徴がある。
2.国境を越えた人々の移動について,送り出し国における貧困といったプッシュ要因や受け入れ国における労働力不足といったプル要因などに加えて,近年では,移民たちが本国や移動先などを巻き込んで形成するトランスナショナルなネットワークなどが注目されている。
3.我が国に居住する外国人のうち,1980 年代以前から滞日している人々はオールドカマー又はオールドタイマーと呼ばれ,1990 年代以降に新たに来日した人々はニューカマーと呼ばれている。法務省によれば,在留外国人数*は,2012 年末から2016 年末までおおむね100 万人程度で推移している。
4.T.H.マーシャルは,永住市民(デニズン)の概念を提起し,外国人がホスト社会で実際に生活しているのであれば,その事実を基にして様々な権利が与えられるべきであると主張した。この概念を基に,「EU 市民権」が構想されているが,実現には至っていない。
5.同化教育は,移民や外国人の出身国の言語や文化の習得を優先させることで,出身国への同化を目指す教育である。それに対して,多文化教育は,移民や外国人に対してホスト社会の文化を身に付けさせることで,社会的統合の実現を目指している。
* 「中長期在留者」及び「特別永住者」の数。統計は,「平成28 年末現在における在留外国人数について(確定値)」による。
解 説
選択肢 1 ですが
エスニシティとは、メンバーのもつ主観的帰属意識、運命共同意識のことです。「人々の所属意識に関係なく」という記述は妥当ではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
選択肢 3 ですが
在留外国人の数は 200 万人以上です。本試験時点において、増加傾向にあります。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
EU 市民権は、1993 年のマーストリヒト条約により確立されました。具体的権利は、加盟国領域内を自由に移動し居住する権利、居住先加盟国における地方自治体選挙およびヨーロッパ議会(欧州議会)選挙における選挙権および被選挙権などです。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
同化教育は、移民や外国人に対してホスト社会の文化を身に付けさせる教育です。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 2 です。
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