問 題
国務請求権に関する ア〜オ の記述のうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
ア.憲法は,歴史的に確立された近代的裁判制度を前提とした裁判を受ける権利を人権として保障し,裁判制度として,裁判の公開や三審制の審級制度を明文で規定している。
イ.裁判を受ける権利については,その性質上外国人にもその保障が及ぶと一般に解されており,裁判所法は,被告人が外国人である刑事裁判においては,裁判所は,検察官の同意を得た上で,日本語以外の言語を用いて裁判を行うことを決定することができる旨規定している。
ウ.憲法第 32 条は,訴訟法で定める管轄権を有する具体的裁判所において裁判を受ける権利を保障したものであるが,管轄違いの裁判所がした裁判であっても,それが恣意的な管轄の間違いでない限り,同条に違反しないとするのが判例である。
エ.裁判員制度は,公平な「裁判所」における法と証拠に基づく適正な裁判が行われることが制度的に十分保障されている上,裁判官は刑事裁判の基本的な担い手とされているものと認められ,憲法が定める刑事裁判の諸原則を確保する上での支障はなく,憲法第 32 条に違反しないとするのが判例である。
オ.憲法第 40 条は,何人も,抑留又は拘禁された後,無罪の裁判を受けたときは,法律の定めるところにより,国にその補償を求めることができると定めているが,同条にいう「抑留又は拘禁」には,たとえ不起訴となった事実に基づく抑留又は拘禁であっても,そのうちに実質上は,無罪となった事実についての抑留又は拘禁であると認められるものがあるときは,その部分の抑留及び拘禁も含まれるとするのが判例である。
1.ア,イ
2.ア,オ
3.イ,ウ
4.ウ,エ
5.エ,オ
解 説
国務請求権とは、国家の積極的な作為を要求する権利のことです。国務要求権、又は、受益権とも呼ばれます。憲法が定める国務請求権には、第 16 条の請願権、第 17 条の国又は公共団体に対する損害賠償請求権、第 32 条の裁判を受ける権利、第 40 条の刑事補償請求権 があります。
記述 ア ですが
裁判を受ける権利(憲法 32 条)、裁判の公開原則(憲法 82 条)は、憲法明文規定事項です。しかし、審級制度は憲法に明文で規定されているわけではありません。記述 ア は誤りです。
記述 イ ですが
裁判所法第 74 条によれば、裁判所では、日本語を用いる。とあります。このため、日本語が通じない人の裁判においては通訳が必要となります。記述 イ は誤りです。
記述 ウ ですが
最判 S24.3.23 によれば、「憲法 第 32 条は、裁判所以外の機関によっては裁判がなされないことを保障したものであって、訴訟法で定める管轄権を有する具体的裁判所において裁判を受ける権利を保障したものではない」と判示されています。記述 ウ は誤りです。
記述 エ は妥当です。
裁判員制度についての記述です。
記述 オ は妥当です。
最大決 S31.12.24 の内容です。
以上より、正解は 5 です。
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