公務員試験 H30年 国家一般職(行政) No.11解説

 問 題     

法の下の平等に関するア〜オの記述のうち,判例に照らし,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

ア.憲法第14 条第1 項は,国民に対し絶対的な平等を保障したものではなく,差別すべき合理的な理由なくして差別することを禁止している趣旨と解すべきであるから,事柄の性質に即応して合理的と認められる差別的取扱いをすることは,何ら同項の否定するところではない。

イ.日本国民である父の嫡出でない子について,父母の婚姻及びその認知により嫡出子たる身分を取得したことを届出による日本国籍取得の要件とする国籍法の規定は,父母の婚姻及び嫡出子たる身分の取得を要件としている部分が憲法第14 条第1 項に違反し,無効である。しかし,そのことから日本国民である父の嫡出でない子が認知と届出のみによって日本国籍を取得し得るものと解することは,裁判所が法律に定めのない新たな国籍取得の要件を創設するという立法作用を行うことになるから,許されない。

ウ.男子の定年年齢を60 歳,女子の定年年齢を55 歳と定める会社の就業規則の規定は,当該会社の企業経営上の観点から定年年齢において女子を差別しなければならない合理的理由が認められない限り,専ら女子であることのみを理由として差別したことに帰着するものであり,性別のみによる不合理な差別を定めたものとして,民法第90 条の規定により無効である。

エ.嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2 分の1 とする民法の規定は,父母が婚姻関係になかったという,子が自ら選択する余地のない事柄を理由として不利益を及ぼすものであって,憲法第14 条第1 項に違反するものである。したがって,当該規定の合憲性を前提として既に行われた遺産の分割については,法律関係が確定的なものとなったものも含め,当該規定が同項に違反していたと判断される時点に遡って無効と解するべきである。

オ.企業は,自己の営業のために労働者を雇用するに当たり,いかなる者を雇い入れるか,いかなる条件でこれを雇うかについて,原則として自由に決定することができるが,労働者の採否決定に当たり,労働者の思想,信条を調査し,これに関連する事項について申告を求めた上で雇入れを拒否することは,思想,信条による差別待遇を禁止する憲法第14 条第1 項に違反する。

1.ア,イ
2.ア,ウ
3.イ,ウ
4.ウ,オ
5.エ,オ

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

記述 ア は妥当です。
憲法第 14 条の法の下の平等は「相対的平等」と解されています。

記述 イ ですが
国籍法 3 条 1 項違憲判決(最判 H20.6.4)により、前半部分は妥当です。後半部分ですが、同判例によれば「・・・日本国民である父と日本国民でない母との間に出生し,父から出生後に認知された子は,父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得したという部分を除いた国籍法3条1項所定の要件が満たされるときは,同項に基づいて日本国籍を取得することが認められるというべきである」と判示されました。つまり、認知と届出のみにより国籍取得が許されます。記述 イ は誤りです。

記述 ウ は妥当です。
最小判S56.3.24 日産自動車事件の内容です。憲法の私人間効力に関する代表的判例です。

記述 エ ですが
最大決 H25.9.4 によれば、前半部分は妥当です。後半部分ですが「本決定の違憲判断は、他の相続につき、本件規定(非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする規定)を前提としてされた遺産の分割の審判その他・・・により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではないと解するのが相当である」と判示されました。「遡って無効と解するべき」ではありません。記述 エ は誤りです。

記述 オ ですが
三菱樹脂事件に関する最高裁判例によれば、特定の思想、信条を理由として雇入れを拒むことは違法ではないとしています。(H26no11)。記述 オ は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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