問 題
現代の社会学説に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。
1.Z.バウマンは,工業化以後の社会のことであるグローバル・ヴィレッジ(地球村)について論じた。彼は,グローバル・ヴィレッジでは,技術の成長は無秩序な形で進んでいくことになること,技術職・専門職を管理する事務職が産業社会の主導的な立場になることなどを示した。
2.M.マクルーハンは,近代以前に存在した共同体のことを,想像された共同体であるとした。彼は,近代以前に存在した共同体に関してのみ,想像されたという性質が強調されるのは,ネーションと異なり,想像の中でのみ実在的だからであるとした。
3.I.ウォーラーステインは,現代社会の特徴として,リキッド・モダニティからソリッド・モダニティへの変化が挙げられるとした。彼は,ソリッド・モダニティでは,全てが流動化していた状態から,秩序や人間関係を規定するソリッドな規制の枠組みが強固になっていることを示した。
4.B.アンダーソンは,世界システム論を提唱した。彼は,社会の構造変動は国民国家を単位として起きていることを明らかにし,世界的な国際分業において,全ての国家は階層化されることなく,あらゆる点で平等であることを指摘した。
5.A.R.ホックシールドは,顧客の適切な精神状態を作り出すために,職務に応じた感情の維持と表現を行うことが要求される労働のことを感情労働とした。彼女は,感情労働を深層演技と表層演技とに分類し,従業員にとっての両者の弊害を明らかにした。
解 説
選択肢 1 ですが
グローバル・ヴィレッジについて論じた代表的な人物は M.マクルーハンです。Z.バウマンは「立法者と解釈者」、「造園管理人と猟場番人」、「固定化と液状化」といった例えを用いて、ポストモダン社会の考察を深める知識人の一人と言われています。『リキッド・モダニティ』などの著者です。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
想像された共同体 としての「ネーション」の起源について考察したのは、B.アンダーソンです。出版技術の普及なしに「想像された共同体」としてのネーションの誕生はなかったと指摘しました。マクルーハンではありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
リキッド・モダニティからソリッド・モダニティへの変化を現代社会の特徴として考察したのは Z.バウマンです。ウォーラーステインは「近代世界システム」において世界システム論を提唱し、世界を「中央、半周辺、周辺」の三層構造と捉えました。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
世界システム論を提唱したのは、ウォーラーステインです。アンダーソンは、想像された共同体 としての「ネーション」の起源について考察しました。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は妥当です。
ホックシールドの感情労働についての記述です。
以上より、正解は 5 です。
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