公務員試験 H28年 国家一般職(行政) No.18解説

 問 題     

行政事件訴訟に関する ア〜オ の記述のうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

ア.土地改良事業の施行に伴い土地改良区から換地処分を受けた者が,当該換地処分は照応の原則に違反し無効であると主張してこれを争おうとする場合には,土地の所有権の確認,明渡し,登記抹消手続請求等の訴えにより目的を達成することができるから,当該換地処分の無効確認を求める訴えを提起することはできないとするのが判例である。

イ.市町村の施行に係る土地区画整理事業の事業計画の決定は,施行地区内の宅地所有者等の法的地位に変動をもたらすものであって,抗告訴訟の対象とするに足りる法的効果を有するものということができ,実効的な権利救済を図るという観点から見ても,これを対象とした抗告訴訟の提起を認めるのが合理的であり,当該事業計画の決定は,行政事件訴訟法第3 条第2 項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たるとするのが判例である。

ウ.原子炉施設の安全性に関する被告行政庁の判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理及び判断は,原子力委員会等の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであり,許可処分が行われた当時の科学技術水準に照らして行うべきであるとするのが判例である。

エ.国家試験の合否の判定は,学問又は技術上の知識,能力,意見等の優劣,当否の判断を内容とする行為であり,その判断の当否を審査し具体的に法令を適用して,その争いを解決調整できるものではないため,法律上の争訟に当たらず,裁判所の司法審査の対象とならないとするのが判例である。

オ.執行停止の申立てがあった場合,内閣総理大臣は,裁判所に対し,執行停止決定の前後を問わず,異議を述べることができる。この内閣総理大臣の異議があった場合,裁判所は,既に執行停止の決定をしているときは,これを取り消さなければならない。

1.ア,イ,ウ
2.ア,イ,エ
3.ア,ウ,オ
4.イ,エ,オ
5.ウ,エ,オ

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

記述 ア ですが
最判 S62.4.17 によれば、土地改良事業の施工に伴い換地処分を受けた者について、従前の土地の所有権確認訴訟等ではなく、むしろ換地処分の無効確認を求める訴えの方が適切というべきとされ、無効確認を求める訴えを提起できるとされています。記述 ア は誤りです。ちなみに、「換地処分」とは、土地の権利変動等の効果を生じる行政処分のことです。

記述 イ は妥当です。
事業計画の決定、公告について、従来は処分性が否定されていました。(青写真論)。最判平20.9.10 により判例変更されました。

記述 ウ ですが
伊方原発事件判例(最判H4.10.29)によれば、被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かについて、処分当時の科学技術水準ではなく、『現在の科学技術水準』に照らし審査するとしています。記述 ウ は誤りです。参考)四国電力伊方発電所

記述 エ は妥当です。
国試合否判定が、司法審査対象となるかが争点となった、技術士試験事件です。(最判 S41.2.8)。 

記述 オ は妥当です。
行政事件訴訟法第 27 条です。

以上より、正解は 4 です。

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