公務員試験 H27年 国家一般職(行政) No.40解説

 問 題     

ハロッド = ドーマー型成長理論を考える。生産関数は固定係数型であり限界消費性向が0.7 資本係数が5 労働生産性の上昇率が0.02であるとする。この経済において次の記述のうち妥当なのはどれか。ただし資本減耗率は0であるとする。

1. 保証成長率は0.6である。

2. 均斉成長経路における成長率は0.04である。

3. 労働力の増加率が0.01であるとき自然成長率が保証成長率を上回っている。

4. 労働力の増加率が0.03であるとき保証成長率が自然成長率を上回っている。

5. 労働力の増加率が0.05であるとき均斉成長経路にある。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

ケインズ理論に基づいた経済成長モデルがハロッド=ドーマー・モデルです。このモデルでは、生産要素を単純化して、資本ストック K と、労働 L のみに注目します。

ハロッド=ドーマー・モデルでは、2つの成長率を考えます。1つめは保証成長率 gw です。保証成長率は、資本ストックが完全に利用されている時の経済成長率を表します。gw = s/v で表されます。s は貯蓄率、v は資本係数と呼ばれます。資本係数とは、財・サービスを1単位生産するのに必要な資本 K/Y のことです。

2つめは自然成長率 gn です。自然成長率は、労働を完全に利用した時の経済成長率を表します。gn = 労働人口の成長率 (n) です。技術成長に伴う 成長率 λ を加えて、gn = n+λ と定義することもあります。gw = gn の時を均斉成長といいます。均斉成長において、実際の成長率 g = gw = gn が成り立ちます。

選択肢 1 ですが
保証成長率 gw = s/v です。これは基礎知識です。限界消費性向、すなわち所得が増えた時に消費に回る割合が 0.7 なので、所得が増えた場合の貯蓄に回る割合 s 1-0.7 = 0.3 です。s = 0.3 を代入します。v は資本係数です。問題文から 5 です。従って、gw = 0.3/5 = 0.06 です。0.6 ではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
均斉成長において、 g = gw = gn が成り立ちます。gw = 0.06 なので、成長率は 0.06 です。0.04 ではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
gn = 0.01+0.02 = 0.03 です。gw = 0.06 です。従って、gw > gn となります。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。
gn = 0.03 + 0.02 = 0.05 です。gw = 0.06 です。従って、gw > gn となります。

選択肢 5 ですが
均斉成長であれば、gn = 0.06 です。労働生産性の上昇率が 0.02 なので、労働力の増加率は 0.06 ー 0.02 = 0.04 と考えられます。0.05 ではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4です。

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