問 題
処分性に関する ア~オ の記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
ア. 税務署長のする源泉徴収による所得税についての納税の告知は、確定した税額がいくばくであるかについての税務署長の意見が初めて公にされるものであるから、支払者がこれと意見を異にするときは、当該税額による所得税の徴収を防止するため、異議申立て又は審査請求のほか、抗告訴訟をもなし得る。
イ. 関税定率法 (昭和55年法律第7号による改正前のもの) に基づいて、税関長のする輸入禁制品該当の通知は、輸入申告に係る貨物が輸入禁制品に該当するという税関長の判断を輸入申告者に知らせ、当該貨物についての輸入申告者自身の自主的な善処を期待してされるものにすぎない観念の通知であるため、処分性は認められず抗告訴訟の対象とならない。
ウ. 宗教団体の経営する墓地の管理者は埋葬等を請求する者が他の宗教団体の信者であることのみを理由としてその請求を拒むことはできないとする趣旨の通達は、従来の法律の解釈、事務の取扱いを変更するものであり、墓地の管理者らに新たに埋葬の受忍義務を課する等これらの者の権利義務に直接具体的な法律上の影響を及ぼすものであるため、墓地の経営者は、当該通達の取消しを求める訴えを提起することができる。
エ. 普通地方公共団体が営む水道事業に係る条例所定の水道料金を改定する条例の制定行為は、同条例が当該水道料金を一般的に改定するものであって、限られた特定の者に対してのみ適用されるものではなく、同条例の制定行為をもって行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視することはできないという事情の下では、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。
オ. 納税のため物納され国有普通財産となった土地の払下げは、行政処分ではなく私法上の売買であって、当該払下げが売渡申請書の提出、これに対する払下げ許可の形式をとっているからといって、当該払下げ行為の法律上の性質に影響を及ぼすものではない。
1. ア、オ
2. イ、ウ
3. イ、エ
4. ア、ウ、オ
5. ア、エ、オ
解 説
記述 ア は妥当です。
最判 S45.12.24 によれば、「税務署長のする源泉徴収による所得税についての納税告知 に対して、「支払い義務者」は抗告訴訟もなし得る」と判示しています。
※源泉徴収制度では、サラリーマンの人が「納税義務者」ですが、雇用主によって徴収されます。雇用者が「支払い義務者」です。そして「受給者」という表現は、サラリーマンに対応する人を意味します。「納税義務者と、実際の支払い義務者が異なる」という点、及び「受給者」がどの立場の人かをしっかりイメージしておきましょう。
↓いかがわしい本 392 冊の輸入に失敗した事例が、行政法上大切になるw
記述 イ ですが
最判昭54.12.25 によれば、「関税定率法に基づく税関長の通知や決定は、観念の通知であるが、これにより法律上の効果をもたらすというべきであるため、抗告訴訟の対象になる 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為 に該当」します。記述 イ は誤りです。
記述 ウ ですが
最判 S43.12.24 によれば、「通達は、行政組織内部における命令にすぎず、裁判所も通達に拘束されない。処分に当たらない」です。従って、取消しを求める訴え提起できません。記述 ウ は誤りです。
記述 エ は妥当です。
特定人に具体的法的効果を及ぼさない規範定立行為です。最判 H18.7.14。
記述 オ は妥当です。
国有普通財産の払下げは、私法上の売買と解すべきとされています。最判 S35.7.12。
以上より、正解は 5 です。
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