公務員試験 2020年 国家一般職(教養) No.40解説

 問 題     

我が国の地方自治等に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.地方公共団体には,議決機関として議会や教育委員会などの各種の委員会が,執行機関として首長が存在している。議会の議員と首長は,住民の直接選挙によって選ばれるが,各種委員会の委員は,二元代表制の原則にのっとって,議員の中から首長が任命することとなっている。

2.地方公共団体の事務は,自らが主体的に行う自治事務と,国から委任された機関委任事務に分けられる。近年,国が主体的に行う業務の一部は機関委任事務に移行されており,国道の管理,パスポートの発行,帰化の許可などは,「三位一体の改革」が行われた際に機関委任事務に移行された。

3.地方議会の議員の任期は 4 年であるが,住民による直接請求で有権者の一定数の署名をもって議会の解散を請求することができる。また,議会が首長の不信任案を可決した場合,首長は議会を解散することができる。

4.条例とは,地方議会の議決により成立する地方公共団体の法規であり,国の法律よりも厳しい規制を定める「上乗せ条例」の成立には,憲法の規定により,議会の議決に加えて住民投票(レファレンダム)で過半数の同意が必要である。

5.地方財政の自主財源には,地方税と地方債がある。しかし,多くの地方公共団体は自主財源だけで歳出を賄うことができないため,地方交付金や国庫支出金なども財源となっている。さらに,財政再生団体となった地方公共団体は,赤字公債を発行することができるようになる。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
各種委員会は「議決機関」ではありません。議決機関は議会です。各種委員会は「執行機関」です。また、委員会の委員は「議員の中から首長が任命」ではなく、議会の同意等を経た上で選任されます。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
地方公共団体の事務は、自治事務と法定受託事務に二分されます。「機関委任事務」は、かつてあった区分です。法改正により廃止されました。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
地方議会に関する記述です。

選択肢 4 ですが
既にある法令以上の厳しい規制を条例で定めることを「上乗せ条例」といいます。条例は法令に違反しなければ制定できます

徳島市公安条例事件の判例によれば、条例が法令に違反するかどうかは、両者に矛盾抵触があるかどうかで判断します。従って、同一目的に基づく厳しい規制を条例で定めることも、条例と法令に矛盾抵触がなければ可能であるといえます。「憲法の規定により,議会の議決に加えて住民投票(レファレンダム)で過半数の同意が必要」というわけではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
「財政再生団体」になると、財政再生計画策定が義務づけられます。そして、総務大臣による同意を受ければ赤字地方債(再生振替特例債)を起債できます。逆に、同意を受けなければ災害対策をのぞき、全ての地方債の起債ができなくなります。「財政再生団体となった地方公共団体は,赤字公債を発行することができるようになる」わけではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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