問 題
次のA,B,Cは,心理学における思考や問題解決の実験に関する記述であるが,それぞれの実験と関連の深い用語の組合せとして妥当なのはどれか。
A.トヴェルスキーとカーネマンの実験(Tversky, A. & Kahneman, D., 1973)では,「k 」や「r 」などの英文字について,その文字から始まる3 文字以上の英単語と,その文字が3 番目にくる英単語のどちらが多いかが質問された。実際には,それらの文字から始まる英単語よりも,それらが3 番目にくる英単語の方が多いにもかかわらず,多くの参加者は,後者より前者の方が多いと答えた。
B.ウェイソンの実験(Wason, P.C., 1966)では,片面に英文字,もう片面に数字が書かれた 4 枚のカードが,それぞれ「E 」,「K 」,「4 」,「7 」を表側にして提示された。これらのカードについて,必要最小限の枚数を選んで裏返し,「片面が母音なら,もう片面は偶数である」という規則が成り立っているかどうか調べることを求められると,「E 」と「7 」が正解であるにもかかわらず,多くの参加者が「7 」を選ばなかったり,誤って「4 」を選んだりした。
C.ドゥンカーの実験(Duncker, K., 1945)では,テーブル上にロウソク,マッチ,押しピンがそれぞれ紙の箱に入れて置かれ,参加者は,テーブルの上にあるものを使って 3 本のロウソクを木製のドアの壁面に立てることを求められた。正解は,それぞれの箱を押しピンでドアに取り付けて平らな台を作り,その上にロウソクを立てるというものであったが,多くの参加者が箱を台として利用することに気付かず,問題を解くことができなかった。
解 説
代表性ヒューリスティックは、ありがちと思う事項の確率を、実際よりも高く見積もる特性です。利用可能性ヒューリスティックは、頭に思い浮かびやすいものや目立ちやすいものを選択してしまうことをといいます。(H26no61)。k や r で始まる単語がすぐ思い浮かぶため(knowledge,room など)、後者より前者が多いと多くの参加者が選んだと考えられます。A と対応するのは「利用可能性ヒューリスティック」です。
「仮説を支持する証拠だけを探す傾向」を「確証バイアス」といいます。多くの参加者が、規則が成立する証拠だけ探して「母音 → E、偶数 → 4」と飛びついたと考えられる実験です。7は何故見る必要があるかというと、「7の裏が母音でない」ことを確認しなければならないからです。また、4を裏返す必要はありません。4の裏がもし母音でなかったとしても、規則には関係ないからです。B と対応するのは「確証バイアス」です。ちなみに、アルゴリズムは問題解決のための一連の規則的手続きです。(H28no62)。
ある特定の解釈や考え方に固執し,他の可能性を考慮しない場合があり、特に物や道具の用途について,その典型的な用途に固執し,別の可能性を考えないことを機能的固定(固着)といいます。多くの参加者が、紙の箱の用途を「ものを入れる」と固執し、問題を解けなかったと考えられます。記述 C と対応するのは「機能的固定」です。ちなみに、日常経験によって身につけてきた知識のまとまりを素朴理論といいます。
以上より、正解は 4 です。
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