公務員試験 2020年 国家一般職(行政) No.57解説

 問 題     

家族社会学等に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.P.アリエスは,古代から近代に至るあらゆる社会の家族形態を研究し,ヨーロッパでは15世紀以前から既に「子供」は大人と比べて身体が小さく,能力的に劣る存在と考えられたために教育的配慮や愛情の対象として扱われていたと結論付けた。

2.平成 29 年における我が国の女性の就業率(15 歳 ~ 64 歳)はドイツや英国よりも高いが,年齢階級別にみた女性の労働力率は,30 歳代に落ち込みが見られるM字カーブを描いており,平成 10 年から平成 30 年にかけては,不景気の影響からM字の底に当たる労働率は低下し,落ち込み傾向が年々強くなっている。

3.T.パーソンズは,核家族を子供の社会化と成人のパーソナリティの安定化を基本的な機能とする一つのシステムとみなし,その中で,男性は職業に従事することで家族に収入をもたらし,女性は子育てや家族の世話に当たるとした。

4.合計特殊出生率とは,15 歳から 60 歳の女性の年齢別出生率を合計したものである。合計特殊出生率は,我が国においては,1989 年には戦後の最低記録であった 1.58 を下回る 1.57 にまで落ち込んだものの,以降はリーマンショックの翌年となる 2009 年を除き,一貫して 2 を超えている。

5.E.W.バージェスと H.J.ロックは,『社会構造――核家族の社会人類学』において 250 の社会の家族を分析し,ヨーロッパでは時代とともに,メンバー相互の情緒的結合によって成り立つ家族から制度としての家族へと変化したことを明らかにした。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
P.アリエス「<子供>の誕生」の著者です。タイトルからも読み取れるように「子ども期」という概念が普遍的ではなく、時代の中で生まれたものであるという主張です。(H29no56)。具体的には、近代に「子ども」という枠組みができたと考えました。「15世紀以前から・・・」ではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
M 字カーブは現在解消されつつあります。「M字の底に当たる労働率は低下し,落ち込み傾向が年々強くなっている」わけではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
パーソンズに関する記述です。

選択肢 4 ですが
合計特殊出生率とは、15 ~ 49 歳の女性の年齢別出生率の合計です。「15 歳から 60 歳」ではありません。また、近年は一貫して 1.5 を下回っています。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
バージェスとロック「家族――制度から友愛へ」で、近代家族が、制度としての家族から、メンバー相互の情緒的結合によって成り立つ家族へと、時代と共に変化したことを明らかにしました。「社会構造――核家族の社会人類学」は、マードックの著書です。

以上より、正解は 3 です。

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