公務員試験 2020年 国家一般職(行政) No.54解説

 問 題     

地球環境問題に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.1972 年,スウェーデンのストックホルムで国連人間環境会議が開催され,同会議の行動計画を実施する組織として国際自然保護連合(IUCN)が設立された。一方で,環境保護に懐疑的な見方も根強く,同年にローマ・クラブが報告書『成長の限界を超えて』を発表し,このまま人口増加や経済成長が続いても人類は科学技術により環境問題を克服して成長を続けられると論じた。

2.湿地の環境を保全して水鳥や湿地帯の生態系を守ることを目的とするワシントン条約が1971年に採択され,絶滅のおそれのある野生動物を守るために,それらの国際取引を規制するラムサール条約が1973 年に採択された。日本は,1980 年に両条約を締結したものの,2019 年,商業捕鯨を再開するためにラムサール条約から脱退した。

3.オゾン層の保護については,気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書に基づき,オゾン層を破壊するおそれのあるメタンの生産を全面的に禁止するモントリオール議定書が 1987 年に採択された。しかし,米国はメタン削減の必要性が科学的に立証されていないとして同議定書に参加しなかった。

4.1992 年にブラジルのリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議(地球サミット)では,将来世代のニーズを満たす能力を損なうことなく,今日の世代のニーズを満たす開発と定義される「持続可能な開発」が国際社会が目指すべき重要な目標の一つとして掲げられた。この会議では,国連気候変動枠組条約,生物多様性条約及び森林原則声明が採択された。

5.温室効果ガスの削減を目的として 1997 年に採択された京都議定書では,先進国に加えて開発途上国のうち中国とインドは温室効果ガス排出量を削減する義務を負うことになった。また,米国は2001 年に京都議定書への不参加を表明したものの,2016 年,B.オバマ政権の下,京都議定書の後継となるパリ協定は批准し,この方針はD.トランプ政権においても引き継がれた。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

選択肢 1 ですが
ストックホルムで開催された国連人間環境会議の提案を受け、実行組織として設立されたのは「国連環境計画(UNEP)」です。「国際自然保護連合」は、1948 年に世界的な協力関係のもと設立された、国家、政府機関、非政府機関で構成される国際的な自然保護ネットワークです。また、会議直前にローマ・クラブから提出されたのは「成長の限界」です。成長の限界について論じました。「成長を続けられると論じた」わけではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
1971 年採択がラムサール条約です。湿地環境保全、水鳥や湿地帯の生態系保全を目的とした条約です。1973 年採択がワシントン条約です。絶滅が危惧される野生動物を守る目的の条約です。条約名が逆です。また共に日本は脱退していません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
「オゾン層を破壊するおそれのある」のはメタンではありません。おそらくフロンなどとの混同を狙った選択肢です。ちなみにですが、メタンは「温室効果ガス」の一種です。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。
国連環境開発会議(地球サミット)についての記述です。

選択肢 5 ですが
京都議定書では、排出量削減の法的義務は先進国にのみ課せられていました。途上国に削減義務が課せられていないことは、参加国の間に不公平感を募らせる要因となり、それもあって、当時最大の排出国であった米国は議定書に批准しませんでした。京都議定書の後継となるパリ協定では、途上国を含む全ての参加国と地域に、2020年以降の「温室効果ガス削減・抑制目標」を定めることを求め、加えて、長期的な「低排出発展戦略」を作成し、提出するよう努力すべきと規定しました。2021 年時点、アメリカは 批准 → ドナルド政権下で脱退 → バイデン政権下で復帰という流れを経ています。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。

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