問 題
債権譲渡に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。ただし,争いのあるものは判例の見解による。
1.Aは,自らの肖像を画家Bに描かせる債権を,Cに譲渡することができる。
2.債権者Aと債務者Bが債権の譲渡を禁止し,又は制限する旨の意思表示をしていたにもかかわらず,AがCにその債権を譲渡した場合には,その譲渡の効力は生じない。
3.医師Aが,社会保険診療報酬支払基金から将来支払を受けるべき診療報酬債権をBに譲渡したとしても,その譲渡の効力が生じることはない。
4.債権者Aは,債務者Bに対して有する債権をCに譲渡し,その旨を2020 年5 月1 日の確定日付のある証書によってBに通知したところ,この通知は,同月7 日にBに到達した。また,Aは,同じ債権をDにも譲渡し,その旨を2020 年5 月2 日の確定日付のある証書によってBに通知したところ,この通知は,同月5 日にBに到達した。この場合,Bは,Cから債務の履行を求められたときは,これに応じなければならない。
5.債権者Aは,債務者Bに対して有する債権をCに譲渡し,その旨を確定日付のある証書によってBに通知したが,Bは,その通知がなされる前にAに対する債権を取得していた。この場合,Bは,Cから債務の履行を求められたときは,Aに対する債権による相殺をもってCに対抗することができる。
解 説
選択肢 1 ですが
民法第 466 条 1 項により、原則、債権は譲り渡すことができます。ただし、性質が許さない場合はこの限りではありません。画家による絵描きの契約等、本人が債務の給付をなすことに重大な意義がある場合は、この例外に該当します。従って、譲渡できません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
改正民法第 466 条 2 項により、当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられません。従って、「譲渡の効力は生じない」わけではありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
改正民法第 466 条の六により、債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しません。従って、譲渡の効力は生じます。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
最判 S49.3.7 によれば、確定日付ある通知が到達した日時、又は確定日付ある承諾の日時の先後によって決せられます。先に到達しているのは、AD 間の債権譲渡に関する通知です。従って、C からの債務履行に応じる必要はありません。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は妥当です。
改正民法第 469 条 1 項の内容です。
以上より、正解は 5 です。
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