公務員試験 2019年 国家一般職(教養) No.37解説

 問 題     

中国の思想家に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.孔子は,儒教の開祖であり,人を愛する心である仁の徳が,態度や行動となって表れたものを礼と呼び,礼によって社会の秩序を維持する礼治主義を理想とした。そして,現世で仁の徳を積み,礼をよく実践することで,死後の世界で君子になることができると説いた。

2.墨子は,道徳によって民衆を治めることを理想とする儒教を批判し,法律や刑罰によって民衆を厳しく取り締まる法治主義を主張した。また,統治者は無欲で感情に左右されずに統治を行うべきであると説き,そのような理想的な統治の在り方を無為自然と呼んだ。

3.孟子は,性善説の立場で儒教を受け継ぎ,生まれつき人に備わっている四つの善い心の芽生えを育てることによって,仁・義・礼・智の四徳を実現できると説いた。また,力によって民衆を支配する覇道を否定し,仁義の徳によって民衆の幸福を図る王道政治を主張した。

4.荘子は,儒教が重んじる家族に対する親愛の情を身内だけに偏った別愛であると批判し,全ての人が分け隔てなく愛し合う兼愛を説いた。さらに,水のようにどんな状況にも柔軟に対応し,常に控えめで人と争わない柔弱謙下の態度を持つことが,社会の平和につながると主張した。

5.朱子は,人が本来持っている善悪を判断する能力である良知を働かせれば,誰でも善い生き方ができるとして,支配階層の学問であった儒学を一般庶民にまで普及させた。また,道徳を学ぶことは,それを日々の生活で実践することと一体となっているという知行合一を主張した。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
孔子の「われ、いまだ生を知らず、いずくんぞ死を 知らんや」という発言があるように、孔子は死後の世界について「わからない」という立場をとりました。「死後の世界で君子になることができる」と説いたわけではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
「法治主義」韓非子「無為自然」老子です。墨子は「兼愛交利」を説きました。兼愛は、自他の区別なく愛することです。交利は、お互いに利益を与えることです。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
孟子性善説についての記述です。

選択肢 4 ですが
「兼愛」を説いたのは墨子です。荘子は、老子の考えを発展させて「万物斉同」を説きました。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
知行合一は、陽明学です。朱子は、理気二元(論)を唱えました。ちなみに、朱子の本名は朱熹です。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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