公務員試験 2019年 国家一般職(教養) No.34解説

 問 題     

第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけての我が国の経済等に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.通貨制度については,第一次世界大戦以来,金本位制を停止していた中で,為替相場の安定を目的として,世界恐慌の最中に旧平価で金本位制に復帰した。しかし,深刻な不況に陥り,金が大量に海外に流出したため,政府は金輸出を再び禁止し,管理通貨制度に移行した。

2.化学工業は,第一次世界大戦中にフランスからの輸入が途絶えたために興隆した。その後,円高水準で金本位制に復帰したために輸入超過となり,生産が壊滅的な打撃を受けたため,管理通貨制度への移行後の円安でも輸出は回復しなかった。

3.農業では,第一次世界大戦中の米価高騰により米の生産量と農家の所得が増加したが,昭和恐慌で各種農産物の価格が暴落し,農業恐慌となった。多数の困窮した農民が都市労働者として都市に移住して農業生産量が激減したため,政府は植民地での米の増産に取り組むこととなった。

4.都市では,大戦景気を背景とした工業化と都市化の発展に伴い,俸給生活者が急増し,新中間層が形成された。昭和恐慌により失業者が増大すると,政府は満蒙開拓青少年義勇軍として失業者を満州に移住させることで都市の人口過剰を解消しようとした。

5.経済界では,大戦景気を背景に急速に拡大した鈴木商店などの新興企業を中心に新興財閥が形成された。新興財閥は,繊維工業や重化学工業といった製造業を中心とし,台湾,朝鮮,満州を拠点に,政党と結び付いて本土での経済基盤を拡大した。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1 は妥当です。
日本の通貨制度についての記述です。

選択肢 2 ですが
日本の化学工業は、第一次世界大戦によりドイツからの輸入が途絶えた事を契機として、政府の手厚い保護奨励策もあって発展しました。「フランスからの輸入が途絶えたため」ではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
当時の農村の二本柱が米と繭の生産でした。農業恐慌では、この二本柱が共に打撃を受け、農村が壊滅的打撃を受けました。すなわち、1929 年の世界恐慌の結果、主要輸出先である米国への生糸輸出が激減し、さらに米が豊作で米価が下落しました。このため「農業生産量が激減したため、政府は植民地での米の増産に取り組むこととなった」わけではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
昭和恐慌を受けて政府は金輸出再禁止、積極財政への転換等の政策で景気回復を図りました。都市の人口過剰解消を図ったわけではありません。ちなみに、満蒙開拓青少年義勇軍は、日本内地の数え年 16 歳から 19 歳の青少年を満州国に開拓民として送出する制度です。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
新興財閥の特徴は、株式市場などの外部市場から資金調達を行い、重化学工業中心に形成されたという点です。「繊維工業」は、一般に軽工業に分類されます。また、「政党と結び付いて」ということはありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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