公務員試験 2019年 国家一般職(行政) No.16解説

 問 題     

行政契約に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.随意契約によることができる場合として法令に列挙された事由のいずれにも該当しないのに随意契約の方法により締結された契約は,違法というべきことが明らかであり,私法上も当然に無効になるとするのが判例である。

2.給水契約は,水道事業者である行政主体が私人と対等の地位において締結する私法上の契約であることから,行政主体は,契約自由の原則に基づき,自らの宅地開発に関する指導要綱を遵守させるための手段として,水道事業者が有している給水の権限を用い,当該指導要綱に従わない建設会社らとの給水契約の締結を自由に拒むことができるとするのが判例である。

3.廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく都道府県知事の許可を受けた処分業者が,公害防止協定において,協定の相手方に対し,その事業や処理施設を将来廃止する旨を約束することは,処分業者自身の自由な判断で行えることであり,その結果,許可が効力を有する期間内に事業や処理施設が廃止されることがあったとしても,同法に何ら抵触するものではないとするのが判例である。

4.指名競争入札を実施するに当たり,地方公共団体である村が,法令の趣旨に反する運用基準の下で形式的に村外業者に当たると判断した事業者を,そのことのみを理由として,他の条件いかんにかかわらず,およそ一切の工事につき指名せず指名競争入札に参加させない措置を採ったとしても,社会通念上著しく妥当性を欠くものとまではいえず,裁量権の逸脱又は濫用があったとはいえないとするのが判例である。

5.公共施設等を効率的かつ効果的に整備するとともに,国民に対する低廉かつ良好なサービスの提供を確保するため,行政機関は,公共施設等に係る建設,製造,改修,維持管理,運営などの事業を民間事業者に実施させることができるが,これらの事業を特定の事業者に一括して委ねることは認められておらず,各事業ごとに事業者を選定し,個別に契約を締結する必要がある。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
法令に違反した随意契約の効力に関する最高裁判例(S62.5.19) によれば、契約を無効にする必要がある「特段の事情」が認められる場合に限って、私法上無効となります。「私法上も当然に無効」ではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
宅地開発指導要綱と給水拒否に関する最高裁判例(H1.11.8) によれば、公序良俗違反になるような事情がない場合において、水道事業者としては、指導要綱に従わない事業者からの給水契約の申込みでも、契約を拒否するのは許されません。「自由に拒むことができる」わけではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
公害防止協定と廃棄物処理法に関する最高裁判例(H21.7.10)の内容です。

選択肢 4 ですが
指名競争入札と村外業者に関する最高裁判例(H18.10.26) によれば、本事例に関して著しく妥当性を欠くものといわざるを得ないとしています。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
PFI 制度が代表例です。事業を一括して委ねることも認められています。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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