公務員試験 2019年 国家一般職(行政) No.6解説

 問 題     

行政組織に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.現代組織論は,ライン・スタッフ理論を提唱し,ライン系統の組織の管理者を補佐するためには,それとは別系統のスタッフによる組織の必要性を指摘し,原則として,スタッフ系統組織はライン系統組織に対して命令を行うべきであるとした。

2.C.I.バーナードは,組織が成立するためには,相互に意思を伝達できる人々がおり,それらの人々が行動により貢献しようとする意欲があり,共通目的の達成を目指すという三つの要素が必要であるとした。

3.コンティンジェンシー理論によれば,安定的な環境では,規則や手続を整備することなく責任の所在が明確な非官僚制的組織となる一方,不確実性の高い環境では,規則や手続を整備することで臨機応変な対応が可能な官僚制的組織となる。

4.英国では,議会制民主主義を重視し,伝統的に,行政組織の編制を変更する場合には,議会制定法である行政組織法の改正が必要であり,内閣が裁量によって行政組織の編制を決定することは認められておらず,行政組織の編制は 1970 年代以降安定している。

5.西尾勝は,日本の中央省庁の組織編制の決定と管理が,自治基本条例によって厳格に管理されている一方,国家公務員の定員は総定員法や定員審査の下で増員が容易に行われていることを,鉄格子効果と名付けた。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

選択肢 1 ですが
ライン・アンド・スタッフ組織は、一貫した命令系統であるライン組織と、ラインの職能を手助けするスタッフが付け加えられた組織形態です。原則として、スタッフはラインへの命令権を持ちません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当です。
バーナードは公式組織成立のための条件として、組織の 3 要素 = 共通目的、協働意志、コミュニケーションを示しました。(H30no56)。

選択肢 3 ですが
「コンティンジェンシー理論」とは、いかなる状況でも高い成果を発揮する最善なリーダーシップは存在せず、外部環境の変化に応じて変化すべきだとする考え方です。コンティンジェンシー(contingency)は、偶然性、偶発性という意味です。(H29no49)。安定的環境であれば、規則や手続が整備されていき、官僚制的組織となると考えられます。環境と組織の対応が逆です。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
1970 年代以降、行政組織がずっと安定しているというのは違和感を覚えるのではないでしょうか。選択肢 4 は誤りです。英国には、我が国における「国家行政組織法」のような中央行政機関のモデル法は存在せず、行政組織法定主義を採りません。省庁再編は、原則として、1975 年国王大臣法に基づき、勅令により行うことができるため、実際には首相の判断で比較的自由に行われます。

選択肢 5 ですが
鉄格子効果とは、行政機構の変化に対する制約効果です。法令による管理があり、変化が制約されているという効果なので「国家公務員の定員は・・・増員が容易に行われていること」を指す用語ではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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