R6年 水質概論 問7 問題と解説

 問 題     

富栄養化指標に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 植物プランクトンに利用されやすい窒素の形態は、硝酸体窒素やアンモニア体窒素の無機体窒素である。
  2. 硝酸体窒素は、魚類の呼吸酵素を阻害するなど毒性が強く、水産用水基準では、淡水域では1.9mg/Lの基準値が設定されている。
  3. 植物プランクトンに利用されやすいりんの形態は、溶解性のオルトりん酸体りんである。
  4. 湖沼や閉鎖性の海域で夏季に底層水が嫌気化すると、オルトりん酸体りんは底泥部から溶出して富栄養化を促す。
  5. 湖沼が富栄養化し、植物プランクトンの生産が活発になると、湖沼水のpH値が上昇する。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

本問は過去の出題傾向とは異なった趣きで、難易度の高い出題といえます。そのため、個人的にはこの問題は捨て問題扱いにしてしまっても構わないと思います。参考までに以下に解説を示しますが、軽い気持ちで読み流してください。

(1)は正しいです。植物プランクトンは窒素を栄養源として必要とし、特に無機体窒素である硝酸体窒素やアンモニア体窒素を吸収して利用します。

(2)が誤りです。硝酸体窒素は一般的に魚類に対する毒性が低いとされています。魚類に強い毒性を示すのは、「硝酸体窒素」ではなく「亜硝酸体窒素」です。

そのため、水産用水基準では、淡水域の硝酸体窒素の基準値が9mg/L、亜硝酸体窒素の基準値が0.03mg/Lとなっていて、亜硝酸体窒素のほうがかなり厳しく設定されています。…とはいえ、正直、試験対策として水産用水基準までカバーしておく必要はないと思います。

(3)は正しいです。植物プランクトンはりんを栄養素として取り込みますが、その際に最も利用しやすい形態が溶解性のオルトりん酸体りんです。

(4)も正しいです。夏季は海面の水温が上がる(海底の水温が相対的に低くなる)ので、上下方向の混合が行われず、底層水が酸素不足(嫌気化)になりやすいです。

この状態では、底泥に結合していたりんがオルトりん酸体りんとして溶出し、水中のりん濃度が上昇します。このようにして富栄養化が促進されます。

(5)も正しいです。植物プランクトンが活発に光合成を行うと、水中の二酸化炭素が消費されるので、酸性である物質が減る分、pH値が上昇します。

以上から、正解は(2)となります。

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