R3年 大規模水質特論 問8 問題と解説

 問 題     

鉄鋼業で、鋼板の表面処理として行われるクロメート工程からの排水に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. クロメート工程からは濃厚廃液とリンス排水が排出される。
  2. クロメート工程で主に用いられる六価クロムは有害で、しかも酸性でもアルカリ性でも沈殿を形成しない。
  3. クロメート排水は還元槽において、亜硫酸水素ナトリウムあるいは硫酸鉄(Ⅱ)などを用いてクロムを還元する。
  4. クロメート排水の還元反応で生じた三価クロムは、pHを3~4に調整して、水酸化クロムとして沈殿除去する。
  5. クロメート排水の還元反応では、一般に酸化還元電位計(ORP計)を用いて還元剤の注入量を調整するが、還元剤として鉄塩を用いる場合は、液中の溶存酸素濃度を指標にすることもできる。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説    

「クロメート」は「クロム酸」という意味なので、これは金属の表面にクロム酸を吹きつけて皮膜を作ることを指す言葉です。

表面処理工程のクロメート排水に含まれる6価のクロム酸は、亜硫酸ナトリウムなどで3価に還元してから処理されます。これは、6価のクロムが強い毒性をもつ上に、沈殿処理が難しいためです。一方で、3価のクロムは比較的安全であり、かつ、沈殿処理が可能です。

よって、(2)と(3)の記述は正しいのですが、(4)の「pHを3~4」が間違っています。

クロムは多くの金属と同様、酸に溶けやすいです。よって、pHを3~4にするとイオン化してしまうので、沈殿除去できません。3価のクロムを水酸化クロムとして沈殿除去するための適切pHは、9~10程度です。

よって、(4)の「3~4」が誤りで、正しくは「9~10」となります。

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