問 題
石灰スラリーを用いる排煙脱硫の各工程に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 吸収剤調整工程では、平均粒子径15μm程度の石灰粉を用いて所定濃度のスラリーを調整する。
- 冷却除じん工程の洗浄水は、腐食性の強い酸性水となる。
- 吸収工程のSO2吸収塔では、処理ガス中の液滴を除去するため、出口近くにデミスターが設置される。
- 副生物回収工程では、水に対する溶解度が小さい水酸化カルシウムが結晶として析出する。
- スート混合方式の排水処理工程では、副生物回収工程から抜き出されるろ液の一部が排水処理の対象になる。
解 説
石灰スラリー吸収法は、排ガス中に含まれる硫黄分(SO2)を最終的に石こう(CaSO4・2H2O)に変えて取り出す脱硫方法です。具体的には、次のような順序によって排ガス中の硫黄分を取り除きます。
まず、図の左上の「排ガス」が「ガス-ガスヒーター」を通り、「冷却除じん塔」へと進みます。ここで水のシャワーによって排ガスを冷やすとともに、ダストなどをある程度洗い流します。ちなみに、排ガスを冷やすのは、後段の吸収塔で硫黄分が吸収しやすくなるよう、前段のここでガス温度を下げるためです。
「冷却除じん塔」を出た排ガスは「吸収塔」へと進みます。図の左下に水と石灰石、水酸化カルシウムを混ぜる「吸収剤調整槽」があり、この吸収剤を吸収塔へ送られます。ここでは、排ガス中に含まれる硫黄分と吸収剤に含まれる石灰石とが、次のような化学反応を起こします。
ちなみに、ここでのpHは大体6くらいですが、このあと図にある通り、pH調整槽で硫酸によって酸性側(pH4程度)に変えられます。これは続く酸化塔での反応を起こしやすくするための措置です。
吸収塔で生成した亜硫酸カルシウムは、「酸化塔」で空気中の酸素によって酸化され、最終生成物である石こう(CaSO4・2H2O)に変わります。亜硫酸カルシウムの酸化反応を化学反応式で表すと、次のようになります。
そして、脱硫プロセスの末に生成した右下に書かれている「石こう」です。
以上から、選択肢(4)に書かれている副生物回収工程で析出するのは、水に対する溶解度が小さい石こうです。
ちなみに、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)は水酸基(ヒドロキシル基)が付いていることからも想像できる通り、多少は水に解けるので溶解度が小さいとはいえません。
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