R1年 水質有害物質特論 問15 問題と解説

 問 題     

シアン化合物の検定に関する記述中、ア~ウの中に挿入すべき語句の組合せとして、正しいものはどれか。

シアン化合物の試験では、水中のシアン化水素酸、シアン化物イオン、( ア )などのすべての形態のものを、( イ )を共存させたpH2以下のりん酸酸性下で蒸留することにより、シアン化水素として留出させて( ウ )に捕集した後、捕集液中のシアン化物イオンを4‒ピリジンカルボン酸‒ピラゾロン吸光光度法などで定量して、シアン化合物の濃度を求める。

  •    ア        イ        ウ
  1. チオシアン酸   アジ化ナトリウム  NaOH溶液
  2. チオシアン酸   EDTA        HCl溶液
  3. チオシアン酸   アジ化ナトリウム  HCl溶液
  4. 金属シアノ錯体  EDTA        NaOH溶液
  5. 金属シアノ錯体  アジ化ナトリウム  NaOH溶液

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説    

問題文は、ピリジン-ピラゾロン吸光光度法によるシアン化合物の検定に関する記述です。

(ア)に関して、加熱蒸留ではシアン化水素酸、シアン化物イオンのほか、金属シアノ錯体をも分解し、シアン化水素として蒸留されます。よって、(ア)には「金属シアノ錯体」が入ります。

この問題にとっては余談ですが重要事項として、金属シアノ錯体の中でもコバルト、水銀、金などのシアノ錯体は比較的安定であるため、この方法では分解されず、ひいてはシアン化水素も発生しません。

よって、もしこれらのシアノ錯体を除去したい場合には、加熱蒸留以外の方法、たとえば紺青法などの処理方法を選ぶ必要があります。(余談おわり)

ところで、問題文に「シアン化合物の試験では~すべての形態のものを~」と書いてあるのにチオシアン酸は含まないのか?という疑問があるかもしれませんが、事実、シアン化合物の検定で測定できる全シアンの中にはチオシアン酸が含まれません。これは分析法の都合上仕方のないことです。

(イ)に関して、シアン化合物を分析する際の前処理は、「EDTAを共存させ、pH2以下のりん酸酸性下で加熱蒸留する」です。

これは頻出事項なので、「EDTA、pH2、りん酸酸性、加熱蒸留」の4つのいずれかを誤った言葉に変えられたとしても、気づけるようにしておきたいです。

(ウ)で、シアン化水素は青酸とも呼ばれている通り、酸性を示します。よって、これを揮発させずにしっかりと捕集するためにはアルカリ性のNaOH溶液を使うのが効果的です。よって、(ウ)には「NaOH溶液」が入ります。

以上から、正解は(4)となります。

コメント