H30年 大気有害物質特論 問5 問題と解説

ガス中の塩化水素の処理に関する記述中、(ア)~(ウ)の中に挿入すべき語句の組合せとして、正しいものはどれか。

塩化水素の水に対する溶解熱は( ア )、ガス中の塩化水素濃度が高いときには吸収装置として( イ )が用いられ、ガス中の塩化水素濃度が低いときには( ウ )が用いられる。

  ア     イ     ウ

  1. 大きく  ぬれ壁塔  充塡塔
  2. 大きく  漏れ棚塔  充塡塔
  3. 大きく  漏れ棚塔  段塔
  4. 小さく  漏れ棚塔  段塔
  5. 小さく  ぬれ壁塔  充塡塔

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説    

塩化水素は水に溶けて水溶液になると塩酸と呼ばれますが、塩酸になるときの溶解熱は大きく、塩化水素が溶けたばかりの水溶液は熱くなりがちです。よって、(ア)には「大きく」が入ります。

(イ)は結論からいえば「ぬれ壁塔」が入りますが、塩化水素濃度が高いときにはぬれ壁塔が用いられる…というような覚え方はしなくてよいと思います。むしろ、ここではぬれ壁塔の特徴をしっかり覚えているかどうかがポイントになってきます。

ぬれ壁塔はガスの冷却が容易なので、大きな発熱を伴うガス吸収に有効であるというのが特徴的です。よって、溶解熱の大きい塩化水素が多く含まれているような場合には、ぬれ壁塔を用いるのが適当です。

(ウ)は塩化水素の濃度が低く溶解熱が問題にならないので、構造が簡単で広く使用されている充塡塔を採用するケースが多いです。よって、(ウ)には「充塡塔」が入ります。

以上のように考えれば正解が(1)だとわかりますが、(イ)と(ウ)については別の考え方で解くこともできます。

問3の解説に示した通り、ガス吸収装置にはガス分散形と液分散形があります。そして、塩化水素のように水に溶けやすい場合はガス側の抵抗支配となるので、液分散形の装置を選ぶ必要があります。

よって、(イ)にしても(ウ)にしても液分散形の装置が入るはずですが、「漏れ棚塔」や「段塔」はガス分散形なので不適です。このように考えれば、(イ)と(ウ)にはそれぞれ「ぬれ壁塔」と「充塡塔」が入ることがわかります。

ここで、以下にガス分散形と液分散形の代表例を挙げておきます。これは重要事項として押さえておくべき知識です。

ガス分散形:

  • 段塔
  • 気泡塔
  • ジェットスクラバー
  • 漏れ棚塔

液分散形:

  • 充塡塔
  • 流動層スクラバー
  • サイクロンスクラバー
  • ベンチュリスクラバー
  • スプレー塔
  • ぬれ壁塔
  • 十字流接触装置

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