H30年 水質有害物質特論 問8 問題と解説

有機りん(農薬)排水の処理に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 水に難溶性であるが、凝集沈殿のような固液分離法だけでは完全には除去できない。
  2. パラチオンは活性炭に対する吸着量が高く、低濃度まで処理される。
  3. 可溶状態であれば、イオン交換法により除去可能である。
  4. 有機物であるが、相当低濃度にならないと生物処理は困難である。
  5. アルカリ性で加水分解されるので、この性質を利用した処理が行われている。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説    

有機りん(農薬)排水の一般的な処理の流れは以下の通りです。

有機りん排水は、酸化カルシウムなどの塩基でpH調整して加水分解処理し、凝集沈殿後、ろ過処理して希釈し、活性汚泥処理を行います。

以上を踏まえて選択肢を見ていきます。

(1)で、有機りん(農薬)はそれなりに分子量のある有機化合物なので、水に溶けにくく凝集沈殿が有効です。しかし、水に溶けにくいだけで少しは可溶状態になっているため、凝集沈殿で「完全な除去」ができるわけではありません。よって、これは正しい記述です。

(2)で、パラチオンは有機りん(農薬)の一種です。パラチオンに限らず大体の有機りん(農薬)は極性が小さいので活性炭に良く吸着します。よって、これも正しい記述です。

(3)で、(1)の解説の通り、可溶状態になったとしても全体から考えるとその割合は小さいです。よって、イオン交換法を使った有機りん(農薬)の処理というのは現実的ではありません。そのため、これが誤りの記述で、正解の選択肢となります。

(4)で、有機りんは農薬として使われていますが、農薬の意義は、農作物を害虫や菌、病気などから守ることです。よって、有機りんと微生物の組み合わせというのは微生物にとってかなり相性の悪い組み合わせです。そのため、有機りん(農薬)を生物処理で除去するのは困難であり、これは正しい記述となります。

(5)で、有機りん(農薬)は酸性なので、アルカリ性のものを使えば加水分解できます。よってこれも正しい内容です。

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