有害金属が人の健康に及ぼす影響に関する記述として、正しいものはどれか。
- 金属水銀の毒性は、侵入経路の違いに関係なく同じである。
- 金属の複合汚染では、毒性は相加的あるいは相乗的に現れ、抑制的に現れることはない。
- 金属は種々の化合物を形成し、その化学種が変化するが、化学種が違っても生体内に摂取されれば毒性は同じである。
- 水銀の吸収量と排泄量のバランスが崩れて体内に蓄積され、ある限界量を超えると毒性が現れるようになる。
- 鉄は必須金属であり、多量摂取しても有害作用を発現しない。
正解 (4)
解 説
(1)に関して、侵入経路とは、たとえば皮膚から吸収したり、口から侵入したり…といった違いです。金属水銀に限らず様々な物質において、侵入経路によって健康影響は大きく異なる場合があります。
(2)で、これは金属同士の相性や、生理作用との兼ね合い次第です。複数の金属が合わさることによって悪影響が増すこともあれば、抑制しあって悪影響が減ることもあります。
(3)について、たとえば水銀は有害物質ですが、金属水銀よりも有機水銀のほうが毒性が強いです。また、各種の有機水銀の中でも、水俣病の原因物質であるメチル水銀は特に毒性が強いです。このように、化学種によって毒性は異なるのが一般的です。
(4)が正しい記述です。水銀はある程度であれば摂取しても体外へ排出できるので問題ありませんが、バランスが崩れて体内に多く溜まってくると悪影響が出始めます。その量以下であれば摂取しても悪影響が生じてこないという量のことを、無毒性量(NOAEL:No Observable Adverse Effect Level)といいます。
(5)で、鉄は必須金属には違いありませんが、過剰摂取は毒となります。鉄に限らずナトリウム(塩分)ですら、摂取しないと生きていけない一方で、過剰摂取は身体に毒です。水溶性のビタミンなど、尿と一緒に体外へ排出できるものは過剰摂取してもあまり問題ありませんが、金属類は体外へ排出されにくいので、適度な量の摂取が求められます。
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