H30年 公害総論 問11 問題と解説

水循環及び水質環境問題に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 地上の水は、主に地球内部からのエネルギーを受けて自然の大循環を繰り返している。
  2. 人の生活に由来する排水(生活排水)には、し尿は含まれない。
  3. 分流式下水道では、汚水は下水処理場で処理され、雨水は川や海に放流される。
  4. 近年では、製造工程に利用される工業用水のほぼ100%が回収利用されている。
  5. 水生生物の保護に関する環境基準として、表層溶存酸素量についての基準値が設定されている。

 

 

 

 

 

正解 (3)

(1)は「地球内部」という書き方が微妙で、地面より内側を指すのか大気圏内という意味なのかいまいちわかりません。しかし、海の水は太陽からのエネルギーを受けて蒸発し、天となって山や陸地に降り、川を流れてまた海へ戻る…という循環をイメージできれば、いずれにせよ太陽の寄与は大きいので、「地球内部」の部分が誤りだと判断することができます。

(2)で、人の生活に由来する排水(生活排水)の発生源としては、し尿と生活雑排水が挙げられます。

(3)が正しい記述です。

古くは合流式が主流でした。これは、汚水管と雨水管を分けずに1本にまとめて流す方法です。建設費や維持管理費が安いというメリットはありますが、一方でデメリットもあります。大雨が降って下水道での水処理のキャパシティを超えた場合、そのまま河川などに放流することになるため、汚水(トイレの水など)が未処理のまま河川に流れてしまうおそれがあります。

一方、分流式は(3)の記述の通りなので、大雨が降ったとしても雨水管のほうだけ河川放流できるので、汚水についてはきちんと水処理を行うことが可能です。よって、経費が多く掛かったとしても、環境汚染の低減のためには分流式のほうが良く、最近はこちらの方式が採用される傾向にあります。

(4)について、工業用水の回収利用はだいぶ普及してきましたが、さすがに「ほぼ100%」は言い過ぎです。正確な数値を覚える必要はないと思いますが、実際には80%程度といわれています。

(5)で、水生生物の保全に係る環境基準は、以下の4項目が定められています。これは重要事項なのでぜひ押さえておいてください。

  • 全亜鉛
  • ノニルフェノール
  • 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩
  • 底層溶存酸素量

つまり、(5)の文中には「表層溶存酸素量」とありますが、ここは「底層溶存酸素量」とするのが正しいです。

というのも、表層は大気からの供給や植物による光合成で酸素がそれなりに豊富にありますが、底層は大気も日光も遠いため場合によっては酸素が少なくなりがちで、そうなると水生生物の生存に大きな影響が出てしまいます。

そのため、水生生物の保全に係る環境基準の一つとして、底層溶存酸素量を設定しています。

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