H29年 水質概論 問9 問題と解説

有害物質の生体影響に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. メタロチオネインは、カドミウムや水銀によって肝臓などで誘導生合成され、毒性を強める働きをしている。
  2. 化学物質の毒性を表現するものとして使用されるLD50(半数致死量)は、急性毒性を中心に評価したものである。
  3. メチル水銀は、血液脳関門を通過して、脳にも高い蓄積を示す。
  4. 遊離シアンは、血液中でシアノヘモグロビンを生成し、ミトコンドリアの電子伝達系を阻害する。
  5. 有機りん剤の毒性は、主にアセチルコリンエステラーゼ活性を阻害することに起因する。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説    

(1)のメタロチオネインは、カドミウムや水銀によって肝臓や腎臓などで誘導生合成されるタンパク質ですが、(1)の記述にある「毒性を強める働き」とは反対で、「重金属類の解毒作用」を有しています。よって、(1)が誤りの記述となります。

これは知識として押さえておきたいところですが、もし知らない場合でも次のように考えると正解できると思います。

人体は恒常性(一定の状態を保ち続けようとする性質)を持っています。たとえば、体温が上がったら汗をかいて身体を冷やそうとするし、喉に細菌がいたら咳をして追い払おうとします。…ということは、カドミウムや水銀が臓器に入ってきたときにメタロチオネインがわざわざ誘導されるのは、これらの重金属類を取り除いて元の状態に戻すためであると考えることができます。

よって、メタロチオネインの役割は「毒性を強める」ではなく、むしろ「毒性を弱める」ことであるはずだと推測できます。

また、別のアプローチとして、この問題は消去法で解いても構わないと思います。特に、(2)や(3)は重要事項として覚えておくべきですし、(4)と(5)も決してマイナーな知識ではなく、ある程度知っておきたい内容といえます。

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