窒素とりんを同時に除去する嫌気・無酸素・好気法のフローとして、正しいものはどれか。
解 説
まず、図中の好気槽と嫌気槽は、酸素の有無によるものなので違いがわかりやすいですが、嫌気槽と無酸素槽とは何となく似ている印象を受けるため、この違いを押さえておく必要があります。
- 好気槽:酸素分子があって、好気性菌による処理が行われる槽
- 無酸素槽:遊離の酸素分子はないけれど、脱窒など、嫌気性菌による酸素原子の関わる反応が行われる槽
- 嫌気槽:酸素分子どころか結合酸素(硝酸など)もなく、偏性嫌気性菌による酸素原子の関わらない処理が行われる槽
このようになります。
「脱窒」とは、たとえば硝酸イオンを窒素分子に変えるような反応ですが、これは嫌気性菌による反応ではあるものの、硝酸イオンというかたちで結合酸素が存在するため、この場所は嫌気槽ではなく無酸素槽ということになります。つまり、「無酸素槽→無酸素分子槽」と読み替えると良いと思います。
また、嫌気槽のところの「偏性嫌気性菌」は絶対嫌気性菌ともいわれ、一切の酸素がない状態でのみ活躍できる菌です。以上を踏まえて、3つの槽の順番がどの選択肢でも「嫌気槽→無酸素槽→好気槽」となっている理由を考えます。
まず、嫌気槽には一切の酸素分子を入れたくないので、一番上流に嫌気槽を置くことになります(好気槽を先に置くと、酸素分子が汚水と一緒に下流に運ばれてしまうためです)。同様にして、無酸素槽も嫌気槽ほど厳密ではないものの酸素分子は存在しないほうが良いので、好気槽の上流になります。
よって、順番としては、上流から嫌気槽、無酸素槽、好気槽と並べることになります。また、それぞれの槽でどのような働きをしているかというと、嫌気槽でりんを水中に放出させて、無酸素槽で脱窒素を行い、好気槽でりんを活性汚泥に取り込んでいます。
以下、このことについてもう少し詳しく解説します。
りんは上記のように嫌気槽と好気槽で処理しますが、まず、嫌気槽では細菌に取り込まれたりんが水中に溶け出します。一方、好気槽では反対に細菌がりんを取り込んで活性汚泥となります。
その後、沈殿槽にて沈んだ汚泥を返送汚泥としてスタート地点(嫌気槽の手前)に戻し、再び嫌気槽でりんを放出、そして好気槽でりんを蓄積…と繰り返すことで、(一見意味がないように思えますが、実は)段々と活性汚泥中のりん濃度が濃くなっていきます。
そして、充分に濃くなった活性汚泥を余剰汚泥(各選択肢の右下)として引き抜けば、系外にりんを排出できます。よって、返送汚泥の正しい場所は選択肢(1)~(3)ということになります。
続いて、脱窒素を行うのは無酸素槽です。ここで処理された窒素は気体のN2として空気中に抜けていくので、りんのように余剰汚泥として排出する必要はありません。
ここで、問15で登場した循環式硝化脱窒素法でも脱窒素槽が2つあるように、脱窒素は一度に完全に除去できるものではないため、この無酸素槽でも1回の処理で済ますのではなく、排水を循環させて何度か処理を繰り返すほうが望ましいです。
そのための排水循環ラインが選択肢の図中に書かれた「循環液」なので、これは矢印が無酸素槽に延びているものが正しいです。つまり、選択肢(1)~(3)の中では(2)が該当します。
以上から、(2)が正解となります。
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