H29年 汚水処理特論 問7 問題と解説

次の(ア)~(エ)の膜分離法のうち、単独で溶解塩類の除去に用いられる方法として、正しいものはどれか。

  • (ア) 精密ろ過法
  • (イ) 限外ろ過法
  • (ウ) 逆浸透法
  • (エ) 電気透析法
  1. (ア)と(イ)
  2. (ア)と(ウ)
  3. (イ)と(ウ)
  4. (イ)と(エ)
  5. (ウ)と(エ)

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説    

まず、膜分離法の代表例としては以下の4つが挙げられます。

  • 精密ろ過法
  • 限外ろ過法
  • ナノろ過法
  • 逆浸透法

これらはいずれも似たようなシステムで、膜(フィルター)を水が通過する際にその膜に不純物を引っ掛けたり吸着させたりすることで、膜よりも後段に進む水をきれいにするというものです。

4つの違いは主に膜に空いている穴(孔といいます)の大きさで、孔径が大きければ粒子などの除去が、孔径が小さければ分子やイオンなどの除去ができます。以下に、それぞれの膜分離法で使用する膜と、その特徴を示します。これらは重要事項として、できるだけ覚えておくことをお勧めします。

  • 精密ろ過法:MF膜(精密ろ過膜、Microfiltration Membrane)
    数十nm~数μm程度の孔径で、微細な懸濁粒子や細菌などの除去に用いられます。
  • 限外ろ過法:UF膜(限外ろ過膜、Ultrafiltration Membrane)
    数nm程度の孔径で、水溶性の高分子物質の除去に用いられます。
  • ナノろ過法:NF膜(ナノろ過膜、Nanofiltration Membrane)
    孔径が約1~2nmとかなり小さく、低分子有機物や金属イオンの回収などに用いられます。
  • 逆浸透法:RO膜(逆浸透膜、Reverse Osmosis Membrane)
    孔の大きさが極小(目安は1nm以下)であり、海水の淡水化などに用いられます。

以上から、問題文に問われている「溶解塩類の除去」ができるのは、海水の淡水化ができる「(ウ)逆浸透法」です。ナノろ過法を使っても溶解塩類をある程度除去できると思いますが、これは問題文に載ってないので考えなくて大丈夫です。

一方、「(ア)精密ろ過法」や「(イ)限外ろ過法」では溶解塩類の除去は無理なので、(ア)と(イ)を含まず、(ウ)を含んでいる(5)が正解となります。

これで答えは出ますが、残る(エ)についても簡単に触れておきます(ただし、重要度については上記のほうが大事なので、以下は参考程度に)。

「(エ)電気透析法」は上記の4つのような物理的な処理とは異なり、その名前の通り、電気的にイオンを分離します。この方法はイオンの分離、特に海水から塩分(ナトリウムイオンや塩化物イオン)を抜くことを得意としているので、問題文で問うている「溶解塩類の除去」に当てはまります。

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