H29年 大規模大気特論 問3 問題と解説

沈降性逆転の成因に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 山越えのフェーン気流が谷間の空気塊(かい)の上空を吹くために発生。
  2. 高気圧圏内で、空気の下降により、気温が断熱上昇するために発生。
  3. 前線の存在により、下層に寒気が、上層に暖気がくるために発生。
  4. 晴れた夜から朝にかけて、地表面の放射冷却により発生。
  5. 冷たい地面上に暖かい空気が流れ込み、下層から気温が下降して発生。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説    

本来、大気の寒暖は高いところのほうが寒く、低いところのほうが暖かいです。これは、山登りで山頂にいくほど気圧が下がっていき、寒くなってくるのをイメージすれば簡単にわかると思います。

一方、空気の性質として、暖かい空気は上にいき、冷たい空気は下にいくという性質があります。これは、冬に暖房をつけた際、頭のほうはボーっとするけど、足先は冷たいままという経験があれば、わかるかと思います。

これらの2つの性質から、地表近くにある暖かな空気は上側に移動し、上空にある冷たい空気は下側に移動するため、空気は常に撹拌されています。この状態が、いわゆる混合層です(併せて問2の解説も参照してください)。

しかし、もし何らかの理由で上空に暖かい空気があり、地表付近に冷たい空気がある場合、特に空気が移動する理由(条件)がないため、空気はあまり動きません。空気が安定していることから、これを接地安定層といいますが、上下方向の温度の関係が通常の状態とは反対になることから、温度逆転層とも呼ばれています(接地安定層=温度逆転層)。

そして、このように温度が逆転する要因は主に5つあり、それがこの問題の選択肢となっています。よって、これらの選択肢は全て温度が逆転する要因として正しい説明になっていますが、この問題ではそのうち、「沈降性逆転」という名前の付いたものを答えなくてはいけません。

各選択肢と、逆転の名称については以下の通りとなります。

  • 選択肢(1)「地形性逆転」:山越えのフェーン気流が谷間の空気塊の上空を吹くために発生。
  • 選択肢(2)「沈降性逆転」:高気圧圏内で、空気の下降により、気温が断熱上昇するために発生。
  • 選択肢(3)「前線性逆転」:前線の存在により、下層に寒気が、上層に暖気がくるために発生。
  • 選択肢(4)「放射性逆転」:晴れた夜から朝にかけて、地表面の放射冷却により発生。
  • 選択肢(5)「移流性逆転」:冷たい地面上に暖かい空気が流れ込み、下層から気温が下降して発生。

以上から、(2)が正解となります。

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