H28年 水質有害物質特論 問15 問題と解説

次の文章は、鉛及びその化合物の検定に用いられる電気加熱原子吸光法の概要を記したものである。文章中の(ア)~(ウ)の中に挿入すべき語句の組合せとして、適切なものはどれか。

前処理した試料に( ア )として硝酸パラジウム(Ⅱ)を加えた後、一定量を電気加熱炉に注入し、乾燥、( イ )の過程を経て原子化し、特定波長の吸光度を測定して鉛を定量する。この際、( ウ )を用いる。

    (ア)           (イ)   (ウ)

  1. 内標準物質          脱塩  標準添加法
  2. 内標準物質          灰化  内標準法
  3. マトリックスモディファイヤー 灰化  内標準法
  4. マトリックスモディファイヤー 灰化  標準添加法
  5. マトリックスモディファイヤー 脱塩  内標準法

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説    

(ア)に関して、マトリックスモディファイヤーを使うのは電気加熱原子吸光法、内標準物質を使うのはICP質量分析法と覚えておいてください。今回は電気加熱原子吸光法の話なので、(ア)には「マトリックスモディファイヤー」が入ります。

(イ)では電気加熱炉で加熱しているので、これは乾燥と灰化の工程になります。もし脱塩したいなら、加熱ではなく水を加えて塩分を溶かすなどの対応が必要です。よって、(イ)には「灰化」が入ります。

(ウ)に関して、測定で得られた強度と定量したい濃度との関係を知るために使われるのは、主に検量線法、標準添加法、内標準法の3つです。

検量線法は、標準液を使って既知の濃度での測定を何パターンか(普通は3点以上)で行い、検量線を引く方法です。その後、未知試料の分析によって得られた強度と検量線とから、未知試料に含まれる濃度を見積もることができます。

標準添加法は、未知試料を何本も用意し、そこに測定対象とする元素の標準液を、それぞれ濃度を変えて加えていきます。そうしてできた各試料を分析することで得られる検量線から未知濃度を定量することができます。これは電気加熱原子吸光法のときに用いる方法なので、マトリックスモディファイヤーとセットで覚えておきたいです。

内標準法は、標準添加法と同じく未知試料に直接標準液を入れますが、入れる元素が測定対象以外の元素です。測定対象以外の元素だからといって未知試料に少しでも含まれている元素を標準液として使ってしまうと正確な検量線が引けなくなってしまうので、普通はイットリウムのような珍しい元素を内標準物質にします。これはICP質量分析法のときに用いる方法なので、内標準物質とセットで覚えておきたいです。

以上から、(ウ)には「標準添加法」が入ります。

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