H28年 水質概論 問2 問題と解説

水質汚濁防止法の目的に関する記述中、(ア)~(エ)の中に挿入すべき語句の組合せとして、正しいものはどれか。

この法律は、工場及び事業場から公共用水域に排出される水の排出及び地下に浸透する( ア )を規制するとともに、( イ )対策の実施を推進すること等によって、公共用水域及び( ウ )の水質の汚濁(水質以外の水の状態が悪化することを含む。以下同じ。)の防止を図り、もって国民の健康を保護するとともに生活環境を保全し、並びに工場及び事業場から排出される汚水及び廃液に関して人の健康に係る被害が生じた場合における事業者の( エ )について定めることにより、被害者の保護を図ることを目的とする。

  (ア)    (イ)   (ウ)   (エ)

  1. 水の浸透 産業廃水 河川  措置
  2. 水の浸透 生活排水 地下水 損害賠償の責任
  3. 特定物質 産業廃水 地下水 措置
  4. 水の浸透 生活排水 河川  損害賠償の責任
  5. 特定物質 産業廃水 地下水 損害賠償の責任

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説    

「水質汚濁防止法」第1条(目的)の条文は以下の通りです。

この法律は、工場及び事業場から公共用水域に排出される水の排出及び地下に浸透する水の浸透を規制するとともに、生活排水対策の実施を推進すること等によって、公共用水域及び地下水の水質の汚濁(水質以外の水の状態が悪化することを含む。以下同じ。)の防止を図り、もって国民の健康を保護するとともに生活環境を保全し、並びに工場及び事業場から排出される汚水及び廃液に関して人の健康に係る被害が生じた場合における事業者の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図ることを目的とする。

ほとんどの法律は第1条にその法律の目的が書かれています。これらは条文の中でも重要なことが書かれていて、かつ、試験でも頻出なので、環境基本法や水質汚濁防止法などの主要な法律の第1条についてはその条文を暗記するくらいが望ましいです。

もちろん、条文を丸暗記していない場合でも以下のように選択肢から正解を判断することは可能です。

(ア)には「水の浸透」か「特定物質」が入りますが、「公共用水域に排出される水の排出」と「地下に浸透する(ア)」が並列な関係となるため、ここは「水の浸透」のほうが両者の表現が対応するので適切です。

(イ)には「産業廃水」か「生活排水」が入りますが、直前の文章が「工場及び事業場から公共用水域に排出される水の排出~(中略)~を規制する」なので、産業廃水についてはすでに謳っています。よって、産業廃水を規制するとともに生活排水対策の推進もする、という話なので、「生活排水」が正しいです。

(ウ)について、直前にある「公共用水域」に「河川」が含まれるため、ここには「地下水」を入れるのが適当です。

(エ)については「措置」でも「損害賠償の責任」でも意味が通ってしまいますが、(ア)~(ウ)が適切に選べていれば選択肢は(2)しか残らないので正解できます。また、無過失責任というのは公害において大事な考え方なのでそれを知っていれば、ここでは「損害賠償の責任」を選ぶのが妥当だと判断できます。

ちなみに、無過失責任とは、工場や事業場から排出された汚水や廃液によって人の健康被害が生じた場合、故意や過失がなかったとしても事業者がその賠償責任を負うというものです。

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