R2年 大規模大気特論 問6 問題と解説

 問 題     

大気環境濃度の予測に用いられるシミュレーションモデルに関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 平坦な地域に立地している施設の高煙突からの煙の着地濃度は、一般的な正規形プルーム拡散式で計算できる。
  2. 地球規模のシミュレーションでは、気流や気温などの気象パラメータの推定が重要である。
  3. 光化学大気汚染のシミュレーションでは、汚染物質間の化学反応と移流拡散についての微分方程式を解析的に解く方法が用いられる。
  4. 高密度ガスが大量に放出されたときの濃度予測には、パスキルの拡散幅などを用いる通常の正規形プルームモデルを用いることはできない。
  5. 複雑地形上の大気拡散予測には、格子モデルなどの数値解モデルの応用例も見られる。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説    

拡散モデルには大きく、「数値解モデル」と「解析解モデル」とがあります。これらを計算方法によってさらに細分すると、数値解モデルにはさらに「格子モデル」と「流跡線モデル」があり、解析解モデルには「プルームモデル」と「パフモデル」があります。

数値解モデルを適用する代表例は「光化学大気汚染」、「地球規模の汚染」、「気候変動のシミュレーション」などが挙げられます。さらに、近年では「複雑な構造を持つ市街地などの汚染予測」にも適用されつつあります。

一方、解析解モデルを適用する代表例は、建屋後流拡散を扱える「PRIMEモデル」のほか、沿岸域で発達する内部境界層によるヒュミゲーション時の拡散モデルである「Lyons and Coleのモデル」や、幹線道路などのように障害物のない直線道路を扱える「HIWAYモデル」などが挙げられます。

以上をまとめると、次のようになります。


『大気汚染モデルの計算方法による分類』

  • 数値解モデル
    • 格子モデル
    • 流跡線モデル
  • 解析解モデル
    • プルームモデル
    • パフモデル

『大気汚染モデルの利用目的による分類』

  • 数値解モデル
    • 光化学大気汚染
    • 地球規模の汚染
    • 気候変動のシミュレーション
    • 複雑な構造を持つ市街地などの汚染予測
  • 解析解モデル
    • PRIMEモデル
    • Lyons and Coleのモデル
    • HIWAYモデル

よって、(3)の光化学大気汚染のシミュレーションは解析解モデルではなく数値解モデルなので、(3)の「解析的」という部分が誤っています。ここを「数値的」に直せば、(3)の文章は正しい記述となります。

以上から、正解は(3)です。

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