R2年 水質有害物質特論 問14 問題と解説

 問 題     

次の測定対象物質の検定法において、試料の前処理法として蒸留法と水蒸気蒸留法のどちらの方法も使用されていないものはどれか。

なお、複数の検定法がある場合には、そのうちのどれかで使用されていれば、使用されているものとみなす。

  1. ふっ素及びその化合物
  2. ほう素及びその化合物
  3. シアン化合物
  4. アンモニア及びアンモニウム化合物
  5. 亜硝酸化合物及び硝酸化合物

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説    

各対象物質の検定法に関する問題は頻出ですが、今回は検定法ではなく、前処理として蒸留や水蒸気蒸留を行うかどうかが問われています。出題傾向からみると難易度の高い部類だといえるため、個人的にはこの問題は捨て問題扱いにしてしまっても構わないと思います。

ただし、(1)と(3)については重要事項として押さえておきたい知識です。そのため、残りの3択までは絞りたいところです。(1)や(3)も含めて以下に解説しますが、上記の通り捨て問題と考えてもいいので、軽い気持ちで読み流してください。

(1)で、ふっ素化合物の分析の際、その前処理として水蒸気蒸留法を用いることがあります。これは、ふっ化物イオンと安定な錯イオンを生成するアルミニウム(Ⅲ)や鉄(Ⅲ)などが共存する場合、錯イオンを検出できずに測定誤差となってしまうためです。

よって、これらの物質が共存することが疑われる場合には、あらかじめ水蒸気蒸留操作によってこれらの妨害物質を除去します。

(2)で、ほう素は特に蒸留や水蒸気蒸留を行う操作がないので、これが正解となります。

(3)で、シアン化合物は分析前処理にEDTAを共存させ、pH2以下のりん酸酸性下で加熱蒸留します。これによってシアン化合物をシアン化水素にすることで測定時に検出しやすくしています。

(4)のアンモニアとアンモニウム化合物に関して、これらの分析時にはアンモニア性窒素以外の窒素化合物が含まれていると正の誤差を与え、アンモニアと錯体を形成するような物質が含まれていると負の誤差を与えます。

よって、これらの誤差を小さくするため、あらかじめ蒸留処置を行うことがあります。

(5)で、亜硝酸化合物及び硝酸化合物を還元蒸留-インドフェノール青吸光光度法で分析する際には、最初に蒸留して、共存するアンモニウムイオンや有機窒素化合物を除去します。

続いて、残った亜硝酸化合物や硝酸化合物に対して、デバルダ合金を作用させてアンモニウムイオンに還元して再度蒸留します。そうして留出したアンモニアを吸光光度法で測定します。

以上から、正解は(2)です。

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