R2年 水質有害物質特論 問8 問題と解説

 問 題     

ふっ素排水の処理に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. ふっ化カルシウム法では、カルシウム剤として水酸化カルシウムを使用する場合が多く、処理対象がふっ素のみである場合は、pHは7付近が最適である。
  2. ふっ化カルシウム法では、処理水中のふっ素濃度を10mg/L以下にすることは困難である。
  3. 水酸化物共沈法では、通常、アルミニウム塩を添加して水酸化アルミニウムを生成させ、このフロックにふっ化物イオンを吸着・共沈させる。
  4. アルミニウム塩を用いた水酸化物共沈法は、ふっ素濃度が20~30mg/L以下の排水や処理目標値の厳しい高度処理に適している。
  5. 吸着法では、チオ尿素基やジチオカルバミド酸基を配位基とした吸着樹脂が用いられる。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説    

(5)に関して、ふっ素の選択吸着樹脂として用いられるのは、希土類水酸化物を交換体とした樹脂です。

一方、チオ尿素基やジチオカルバミド酸基を配位基とした吸着樹脂で吸着除去できるのは、水銀です。

よって、正解は(5)となります。

この問題は(2)と(4)についても特に重要であるため、ここで解説しておきます。

(2)のふっ化カルシウム法はふっ素除去の有用な処理方法のひとつですが、これだけではふっ素濃度が10~20mg/L程度までしか下がりません。これは、生成したふっ化カルシウムがわずかに水に溶けることや、コロイドを形成して浮いてしまう(=沈殿しにくくなる)ためです。

一方、(4)のアルミニウム塩による水酸化物共沈法の場合、水酸化アルミニウムにふっ素を吸着させることになりますが、水酸化アルミニウムへのふっ素の吸着量は小さいため、ふっ素濃度の高い排水に対してこれをやろうとすると、大量のアルミニウム塩が必要となってしまい、現実的ではありません。

よって、ふっ素が30~50mg/L以上の高濃度の排水を処理するときには、まずはふっ化カルシウム法でふっ素濃度10~20mg/L程度まで下げて、その後、アルミニウム塩による水酸化物共沈法を使って排水基準(8mg/L)以下まで処理するのが望ましいです。

コメント