問 題
有機塩素系化合物の処理に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 揮散法により発生した排ガスを処理する方法として、吸着法や酸化分解法などがある。
- 活性炭吸着法は、有機塩素系化合物をごく微量まで除去できるが、吸着量が少ない。
- 土壌汚染の原位置分解法では、鉄粉を主体とする反応材を用いて、汚染地下水を酸化無害化する。
- トリクロロエチレンの好気性の生物分解法では、最終的に水とCO2と塩化物イオンが生成する。
- トリクロロエチレンの嫌気細菌による分解では、還元的脱塩素化反応が起こる。
解 説
この問題の正解は(3)ですが、原位置分解法は出題頻度から見てマイナーな知識であるので、カバーできていなくても仕方ないと思います。だからといって捨て問題というわけではなく、(1)、(2)、(4)、(5)はどれも押さえておきたい重要事項なので、消去法で正解したい問題です。
トリクロロエチレンやテトラクロロエチレンなどの有機塩素化合物の排水処理方法は、主に以下の4つです。
- 揮散法
- 活性炭吸着法
- 酸化分解法
- 生物分解法
揮散法は、曝気により揮散させることで排水から分離する方法です。(1)に書かれている通り、発生した排ガスは吸着法や酸化分解法などを使って処理します。
活性炭吸着法のメリットとデメリットは(2)にある通りです。つまり、使用する活性炭の量さえ惜しまなければ、有機塩素化合物(トリクロロエチレンなど)をほぼ完全に取り除くことができます。
好気細菌によって有機塩素化合物を分解する場合は酸化反応が進行します。最終的に、有機塩素化合物中の炭素、水素、塩素はそれぞれCO2、H2O、Cl–に分解されるので、(4)は正しいです。
嫌気細菌によって有機塩素化合物を分解する際は、好気のときとは反対で、還元反応となります。この場合、嫌気細菌の働きにより、有機塩素化合物の塩素原子を1つずつ水素原子に変えます。
たとえばトリクロロエチレンを例に挙げると、トリクロロエチレン(C2HCl3)の塩素が1つずつ水素と入れ替わるので、ジクロロエチレン(C2H2Cl2)、ビニルクロライド(C2H3Cl)を経て、最後に塩素のないエチレン(C2H4)まで分解されます。よって、(5)も正しいです。
以上から、残る(3)が誤りの記述で、正解の選択肢となります。
参考までに(3)の間違っている箇所を示しておくと、土壌汚染の原位置分解法では、鉄粉を主体とする反応材を使えば、これが還元剤となって有機塩素系化合物から塩素を除去できるので、炭化水素に変えるという還元無害化が成立します。
還元分解のほかにも酸化分解や微生物分解を利用した無害化方法もありますが、鉄粉を使う場合は還元剤となるので、(3)の「酸化無害化する」という部分が誤りです。
コメント