問 題
有効煙突高さが100mとして、パスキルの方法に従って計算した煙軸直下の正規化着地濃度(Cu/Q)は図のような分布となる。ただし、A~Fは安定度分類である。
本曇りの昼間で、風速u=4m/s、排出量Q=1m3/sのとき、最大着地濃度(ppm)として最も近い値はどれか。
- 2×10-6
- 2×10-1
- 2
- 4
- 20
解 説
図中にはパスキルの大気安定度A~Fの軌跡がそれぞれ描かれていますが、それらの違いを理解しておく必要があります。パスキルの安定度分類は以下の通りとなります。これはよく使う知識なので、ぜひ押さえておいてください。
- A:強不安定状態
- B:並不安定状態
- C:弱不安定状態
- D:中立状態
- E:弱安定状態
- F:並安定状態
A~Cの不安定状態は、地表近くに暖かい空気があり、上空に冷たい空気がある場合の状態です。本来は暖かい空気が上に、冷たい空気が下に移動するものなので、この状態だと上下の空気が入れ替わるように大きく動きます。
このように、大気の流れが大きくなるような状態が、不安定状態です。晴れた日の日中は、太陽が地表を温めるため、不安定状態になりやすいです。
特に、晴れた日の昼間で風が弱いときは、地表がじっくり温められるため、この現象が顕著になります。つまり、このような場合は強不安定状態(パスキルの大気安定度A)となります。
逆に、風が強い場合には地表の熱がうまく拡散され、不安定状態はやわらぎます。よって、このような場合は弱不安定状態(パスキルの大気安定度C)となります。また、風の強さが強くも弱くもない場合が、並不安定状態(パスキルの大気安定度B)です。
一方、晴れた日の夜は放射冷却によって地表が冷やされます。この場合、地表が冷たくて上空が暖かいという構図になりますが、この関係は自然の状態と同じなので、地表と上空の空気はそのままの状態を維持し、ほとんど動こうとしません。
このように、大気の流れが小さくなるような状態が、安定状態です。晴れた日の夜間は安定状態になりやすいです。
特に、風が弱い場合には地表の空気が冷やされたまま動かないので、より強い安定状態になるといえます。これが並安定状態(パスキルの大気安定度F)です。
いくらか風が吹いていると安定状態は少し弱くなるので、弱安定状態(パスキルの大気安定度E)となります。さらに風が強くなると、中立状態(パスキルの大気安定度D)となります。
また、天気が本曇の場合には、日中でも夜間でも中立状態(パスキルの大気安定度D)が当てはまります。
以上をまとめると、パスキルの安定度分類と気象条件の関係は次のようになります。
- A:強不安定状態 (晴れ+日中+弱い風)
- B:並不安定状態 (晴れ+日中+中くらいの風)
- C:弱不安定状態 (晴れ+日中+強い風)
- D:中立状態 (本曇 または 晴れ+夜間+強い風)
- E:弱安定状態 (晴れ+夜間+中くらいの風)
- F:並安定状態 (晴れ+夜間+弱い風)
前フリが長くなりましたが、上記のことは重要事項なのでぜひ押さえておいてください。
ここでやっと本題に入りますが、今回は天気が本曇なので、パスキルの安定度分類はDになります。昼間という情報もありますが、本曇の場合は昼夜問わずにDとなります。
このときの正規化着地濃度は、図のDの最も高い点のCu/Qを読み取ればよいので、8×10-6とわかります。
求めたいのは最大着地濃度Cですが、uとQは問題文で与えられているため、次のように方程式を解くことでCを求めることができます。
ちなみに、最後の式変換は単位を[ppm]に合わせるための操作です。ppmはparts per millionの略で、百万分率のことなので、1×10-6=1[ppm]となります。百分率が1×10-2=1[%]になるのと同じ考え方です。
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