H28年 水質有害物質特論 問3 問題と解説

鉄(Ⅱ)塩還元法によるクロム(Ⅵ)排水の処理に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 亜硫酸塩還元法よりも、強酸性から強アルカリ性の広い範囲での還元が可能である。
  2. 薬注制御及び薬品の取り扱いの容易さ、スラッジ発生量の少なさから亜硫酸塩還元法よりも使用されることが多い。
  3. 他の工程で排出される鉄(Ⅱ)イオンを含む廃酸が利用できる。
  4. 酸化還元電位計(ORP計)による薬注制御は、pH1.5以下の強酸性にすれば可能である。
  5. 溶存酸素計(DO計)による薬注制御は、pH5~12の広い範囲で行うことができる。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説    

鉄(Ⅱ)塩還元法は、鉄(Ⅱ)塩(FeCl2など)を使って有害なクロム(Ⅵ)をより無害なクロム(Ⅲ)に還元する処理方法です。この反応により鉄(Ⅱ)のほうは鉄(Ⅲ)に酸化され、水酸化鉄(Ⅲ)として沈殿します。

一方、亜硫酸塩還元法は、亜硫酸塩(NaHSO3など)を使ってこちらもクロム(Ⅵ)をクロム(Ⅲ)に還元します。

(2)について、鉄(Ⅱ)塩は亜硫酸塩よりも酸として強い上に腐食性もあるので、決して取り扱いが容易とはいえません。また、鉄(Ⅱ)塩還元法だと水酸化鉄(Ⅲ)を含んだ大量のスラッジが発生してしまう一方、亜硫酸塩還元法であればナトリウムなどは塩にならず水に溶けるため、薬剤由来のスラッジは生じません。

よって、亜硫酸塩還元法のほうが使い勝手が良いために使用されることも多いです。つまり、(2)の記述は真逆のことが書いてあるので、これが誤りの選択肢となります。

ただし、鉄(Ⅱ)塩還元法にもメリットはあって、(1)にあるように広いpH域での還元が可能です。また、(3)にあるように鉄(Ⅱ)イオンを含む廃酸が利用できるので、そのような廃液がある場合は鉄(Ⅱ)塩還元法が便利です。

コメント