R7年 汚水処理特論 問17 問題と解説

 問 題     

生物学的脱りん法及びそれに寄与する細菌に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 嫌気状態では、細胞内に蓄積したポリりん酸が分解するため、活性汚泥混合液中のりん酸の濃度が上昇する。
  2. 嫌気状態では、活性汚泥混合液中の有機物が摂取されて細胞内に貯蔵される。
  3. 好気状態では、細胞内貯蔵基質を酸化・分解して、エネルギーを生産する。
  4. 好気状態では、ポリりん酸の顆粒が生成される。
  5. 最終沈殿池において、汚泥から顆粒状のポリりん酸が分離されることにより、りんが除去される。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

生物的脱りん法の出題は頻出ですが、その概要や計算問題ではなく詳細な知識が問われる問題は珍しいです。実務でこれに携わっている受験者の方はともかく、そうでなければ馴染みの薄いところだと思うので、出題頻度から考えると、本問は捨て問題扱いにしてしまって構わないと思います。

生物的脱りん法は、活性汚泥によるりんの過剰摂取現象を利用するもので、そのフローは次のように図示されます。

上図において、嫌気槽では細菌に取り込まれたりんが水中に溶け出します。一方、好気槽では反対に細菌がりんを過剰に取り込んで、りん含有量の高い汚泥となります。その後、沈殿池で汚泥を沈めて、一部は余剰汚泥として系外へ排出し、残りは返送汚泥として嫌気槽へ戻します。

以上よりの概要は比較的大事な話として押さえておいてください。以下は余裕がなければ読み流してしまって構いません。

(1)は正しいです。嫌気状態では、細胞中のポリりん酸が加水分解されて正りん酸として混合液中に放出されます。よって、混合液中のりん酸の濃度は上昇します。一方で、混合液中の有機物は細胞内に摂取されます。

(2)も正しいです。上記の通り、嫌気状態では正りん酸を放出しながら有機物を摂取しますが、摂取した有機物はPHB(ポリ-β-ヒドロキシ酪酸)などの形で細胞内に貯蔵されます。

(3)と(4)はともに正しいです。好気状態において、嫌気状態のときに蓄積したPHB(ポリ-β-ヒドロキシ酪酸)を酸化・分解し、これで得たエネルギーを使って嫌気状態のときに放出した以上の正りん酸を混合液中から摂取し、ポリりん酸として再蓄積します。

(5)が誤りです。(4)の解説の通り、ポリりん酸は細菌の細胞内に蓄積するため、汚泥から分離されるわけではありません。解説の冒頭の図に示したように、沈澱池ではりんは余剰汚泥として系外へ排出されます。

以上から、正解は(5)となります。

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