R6年 水質概論 問9 問題と解説

 問 題     

有害物質の人の健康影響に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. セレンは、金属間相互作用により水銀の毒性を高める相乗効果が大きい。
  2. メタロチオネインはカドミウムなどの重金属と結合し、その毒性を弱める働きがある。
  3. シアン化合物は、細胞内ミトコンドリアのチトクロームオキシダーゼと結合し、細胞呼吸を阻害する。
  4. 農薬の有機りん剤は、アセチルコリンエステラーゼの働きを阻害する。
  5. 国際がん研究機関(IARC)の発がん性評価では、グループ1に分類された物質は「ヒトに対して発がん性がある」とされている。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

本問は内容的にやや難易度の高い出題といえます。悪問・奇問というわけではないので、余裕があれば押さえておきたい知識ですが、ご自身の学習状況や理解度によっては後回しにしても構わないと思います。

(1)が誤りです。セレンは水銀と結合して不溶性の化合物を形成し、体内での水銀の吸収や影響を抑える働きがあります。そのため、セレンは水銀の毒性を弱めるため、(1)の記述は誤っています。

(2)は正しいです。カドミウム、水銀、亜鉛、鉛などの重金属の暴露により肝臓などで誘導生合成されるメタロチオネインは、重金属の解毒作用の役割を果たしています。

(3)も正しいです。シアン化合物はミトコンドリア内の酵素であるチトクロームオキシダーゼに結合し、酸素の利用を阻害することで細胞呼吸を停止させます。これがシアン化合物の強い毒性の原因です。

(4)も正しいです。有機りん系農薬による中毒症状は、アセチルコリンエステラーゼの阻害に起因します。これにより神経伝達物質であるアセチルコリンが上手に代謝されず体内に残り続け、神経障害などの中毒症状を生じます。

(5)も正しいです。発がん性リスクの分類には5段階(1、2A、2B、3、4)あり、その内訳は以下の通りです。

  • グループ1:ヒトに対する発がん性あり
  • グループ2A:ヒトに対する発がん性おそらくあり
  • グループ2B:ヒトに対する発がん性あるかもしれない
  • グループ3:ヒトに対する発がん性なんともいえない
  • グループ4:ヒトに対する発がん性おそらくなし

以上から、正解は(1)となります。

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