問 題
JISによる排ガス中の窒素酸化物(NO+NO2)の化学分析法のうち、定量下限が最も小さいものはどれか。
- イオンクロマトグラフ法
- ナフチルエチレンジアミン吸光光度法
- 亜鉛還元ナフチルエチレンジアミン吸光光度法
- フェノールジスルホン酸吸光光度法
- ザルツマン吸光光度法(NO2のみ)
解 説
各種の窒素酸化物分析方法の定量下限の大小を問うのは、かなりマイナーな知識であるように感じます。そのため、問13に続いて、この年2問目の捨て問題だと個人的には思います(15問中9問取れば良いので、2問くらいは許容範囲です)。
一応、答えを示しておくと、(3)の亜鉛還元ナフチルエチレンジアミン吸光光度法の定量下限が最も小さく、1volppm程度とかなり小さい値まで測定できます。よって、正解は(3)です。
この問題は捨て問題でも構わないと書きましたが、選択肢にあるNOx(NO+NO2)またはNO2の分析方法そのものは重要事項であり、ぜひ理解しておいてもらいたい内容なので、以下にまとめておきます。
ちなみに、選択肢(1)~(4)はいずれもNOx(NO+NO2)の分析方法としてJISで規定されていますが、(5)のザルツマン吸光光度法だけはNOxではなくNO2の分析方法となります。
(3)の亜鉛還元ナフチルエチレンジアミン吸光光度法は、次のような操作手順です。
- 試料ガス中のNOxをオゾンで酸化し、吸収液に吸収させて硝酸イオンとする。
- 亜鉛により硝酸イオンを亜硝酸イオンに還元する。
- 発色試薬(スルファニルアミド+ナフチルエチレンジアミン)を加える。
- 波長545nm(赤紫色)の吸光度を測定する。
(2)のナフチルエチレンジアミン法は名前の通り(3)の手順と似ていますが、直接亜硝酸イオンにする点がポイントです。
- 試料ガス中のNOxをアルカリ性の吸収液に吸収させて亜硝酸イオンとする。
- 発色試薬(スルファニルアミド+ナフチルエチレンジアミン)を加える。
- 波長545nm(赤紫色)の吸光度を測定する。
(1)のイオンクロマトグラフ法はNOxの分析方法の中で唯一、発色させて吸光度を測る方法ではありません。
- 試料ガス中のNOxをオゾンか酸素で酸化し、吸収液に吸収させて硝酸イオンとする。
- イオンクロマトグラフにより測定する。
(4)のフェノールジスルホン酸吸光光度法はNOxの分析方法の中で唯一、硝酸イオンの吸光度を測定します。(2)、(3)、(5)は亜硝酸イオンを対象とした発色試薬ですが、これは硝酸イオンが対象なので発色試薬が異なり、黄色になります。
- 試料ガス中のNOxをオゾンか酸素で酸化し、吸収液に吸収させて硝酸イオンとする。
- 発色試薬(フェノールジスルホン酸)を加える。
- 波長400nm(黄色)の吸光度を測定する。
(5)のザルツマン吸光光度法は上記の通り、NOxの測定では使えず、NO2の分析方法となります。
- 試料ガス中のNO2を吸収発色液(スルファニル酸−ナフチルエチレンジアミン酢酸溶液)に通して発色させる。
- 波長545nm(赤紫色)の吸光度を測定する。
コメント
以下の解説、正解は(3)で良かったですよね?
一応、答えを示しておくと、(3)の亜鉛還元ナフチルエチレンジアミン吸光光度法の定量下限が最も小さく、1volppm程度とかなり小さい値まで測定できます。よって、正解は(1)です。
修正しました。ご指摘ありがとうございます!