電験三種 R4年度上期 機械 問3 問題と解説

 問 題     

次の文章は、三相巻線形誘導電動機の構造に関する記述である。

三相巻線形誘導電動機は、( ア )を作る固定子と回転する部分の巻線形回転子で構成される。

固定子は、( イ )を円形又は扇形にスロットとともに打ち抜いて、必要な枚数積み重ねて積層鉄心を構成し、その内側に設けられたスロットに巻線を納め、結線して三相巻線とすることにより作られる。

一方、巻線形回転子は、積層鉄心を構成し、その外側に設けられたスロットに巻線を納め、結線して三相巻線とすることにより作られる。

始動時には高い電圧にさらされることや、大きな電流が流れることがあるので、回転子の巻線には、耐熱性や絶縁性に優れた絶縁電線が用いられる。

一般的に、小出力用では、ホルマール線や( ウ )などの丸線が、大出力用では、( エ )の平角銅線が用いられる。

三相巻線は、軸上に絶縁して設けた3個のスリップリングに接続し、ブラシを通して外部(静止部)の端子に接続されている。この端子に可変抵抗器を接続することにより、( オ )を改善したり、速度制御をすることができる。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  •  ア     イ      ウ      エ    オ
  1. 回転磁界 高張力鋼板 ビニル線    エナメル線 効率
  2. 回転磁界 電磁鋼板  ビニル線    エナメル線 始動特性
  3. 電磁力  電磁鋼板  ビニル線    エナメル線 効率
  4. 電磁力  高張力鋼板 ポリエステル線 ガラス巻線 効率
  5. 回転磁界 電磁鋼板  ポリエステル線 ガラス巻線 始動特性

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説    

( ア )について、三相誘導電動機は、回転磁界を作る固定子と回転する回転子から構成されます。

よって、( ア )には「回転磁界」が入ります。

( イ )について、固定子は固定子巻線と固定子鉄心から構成されます。けい素鋼板などの電磁鋼板を円形または扇形にスロットとともに打ち抜いて、必要な枚数積み重ねて積層鉄心を作り上げ、その内側に設けられたスロットに巻線を納め、結線して三相巻線をすることによって固定子ができあがります。

よって、( イ )には「電磁鋼板」が入ります。

( ウ )と( エ )は珍しい出題パターンなので、あまり馴染みがない知識かもしれません。そのため、個人的にはここは運任せにしてしまっても仕方がないと思います。

結論から言えば、小出力用では、機械的強度に優れているホルマール線や耐熱性を有するポリエステル線などの丸線が用いられます。一方、大出力用では、耐熱性や絶縁性に優れるガラス巻線の平角銅線が用いられます。

よって、( ウ )には「ポリエステル線」が、( エ )には「ガラス巻線」が入ります。

( オ )について、三相巻線形誘導電動機では、外部の可変抵抗器で二次抵抗値を変化させることができます。トルクの比例推移により、二次抵抗値を大きくすると、最大トルク(停動トルク)を発生する滑りが大きくなり、始動特性が良くなります。

トルクの比例推移についてもっと深く理解しておきたいと思う方は、誘導機のトルク-回転速度曲線、比例推移のページや三相誘導電動機の始動のページを参照してください。

よって、( オ )には「始動特性」が入ります。

以上から、( ア )は「回転磁界」、( イ )は「電磁鋼板」、( ウ )は「ポリエステル線」、( エ )は「ガラス巻線」、( オ )は「始動特性」となるので、正解は(5)です。

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