電験三種 R4年度上期 電力 問14 問題と解説

 問 題     

我が国の電力用設備に使用されるSF6ガスに関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. SF6ガスは、大気中に排出されると、オゾン層への影響は無視できるガスであるが、地球温暖化に及ぼす影響が大きいガスである。
  2. SF6ガスは、圧力を高めることで絶縁破壊強度を高めることができ、同じ圧力の空気と比較して絶縁破壊強度が高い。
  3. SF6ガスは、液体、固体の絶縁媒体と比較して誘電率及び誘電正接が小さいため、誘電損が小さい。
  4. SF6ガスは、遮断器による電流遮断の際に、電極間でアーク放電を発生させないため、消弧能力に優れ、ガス遮断器の消弧媒体として使用されている。
  5. SF6ガスは、ガス絶縁開閉装置やガス絶縁変圧器の絶縁媒体として使用され、変電所の小型化の実現に貢献している。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説    

(1)は正しいです。SF6ガスはフロンガスと違ってオゾン層を破壊することはありませんが、温室効果ガスであり、地球温暖化に及ぼす影響は同じ質量の二酸化炭素と比べてはるかに大きいです。そのため、使用量の削減や回収が課題となっています。

(2)も正しいです。SF6などの気体絶縁材料は、圧力を上げることで絶縁耐力を高められるという特徴があります。その中でも特にSF6は優れた絶縁性能を有しています。

(3)も正しいです。誘電正接とは、電力の損失を表すパラメータの一つです。SF6ガスは、誘電率と誘電正接が小さく、その結果、誘電損も小さくなります。誘電正接についてもう少し詳しく知りたい方は、R2年 問14の解説を参照してください。

(4)が誤りです。遮断器による電流遮断の際には電極間でアーク放電が発生し、これを消滅させないと事故につながります。このアーク放電を消滅させることを「消弧」といい、圧縮したSF6ガスを吹き付けることでアーク放電を消弧することができます。

よって、(4)の後半の「消弧能力に優れ、ガス遮断器の消弧媒体として使用されている。」は正しいですが、発生したアーク放電を消弧しているので、前半の「電極間でアーク放電を発生させないため」という部分が誤りと判断できます。

(5)は正しいです。SF6は無色無臭の気体で、無毒、不活性、不燃性で絶縁性に優れ、かつ安価という特徴があるので、(4)のようにガス遮断器の消弧媒体としても、(5)のようにやガス絶縁変圧器の絶縁媒体としても非常に都合の良い物質です。

以上から、(4)の記述が誤りなので、正解は(4)となります。

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