電験三種 R2年 電力 問14 問題と解説

 問 題     

我が国のコンデンサ、電力ケーブル、変圧器などの電力用設備に使用される絶縁油に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 絶縁油の誘電正接は、変圧器、電力ケーブルに使用する場合には小さいものが、コンデンサに使用する場合には大きいものが適している。
  2. 絶縁油には、一般に熱膨張率、粘度が小さく、比熱、熱伝導率が大きいものが適している。
  3. 電力用設備の絶縁油には、一般に古くから鉱油系絶縁油が使用されているが、難燃性や低損失性など、より優れた特性が要求される場合には合成絶縁油が採用されている。また、環境への配慮から植物性絶縁油の採用も進められている。
  4. 絶縁油は、電力用設備内を絶縁するために使用される以外に、絶縁油の流動性を利用して電力用設備内で生じた熱を外部へ放散するために使用される場合がある。
  5. 絶縁油では、不純物や水分などが含まれることにより絶縁性能が大きく影響を受け、部分放電の発生によって分解ガスが生じる場合がある。このため、電力用設備から採油した絶縁油の水分量測定やガス分析等を行うことにより、絶縁油の劣化状態や電力用設備の異常を検知することができる。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説    

(1)に関して、誘電正接とは、電力の損失を表すパラメータの一つです。よって、変圧器・電力ケーブル・コンデンサのいずれについても誘電正接は小さいほうが有利なので、(1)の「コンデンサに使用する場合には大きいものが適している」が誤りとなります。

以下、もう少し詳細な解説をしますが、上記に示した「誘電正接は電力の損失を表すパラメータ」というのは重要事項なので、下記の理屈は抜きにしても、このことはぜひ覚えておいてください。

絶縁油はその名の通り絶縁のために用いるものですが、実際には、わずかではあるものの電気エネルギーの一部が熱エネルギーに変わり、その分が損失となります。このことを、ある絶縁体の等価回路として示すと、以下のように図示することができます(三相回路のうち1相あたりの等価回路)。

上図において、電源電流Iのうち全てがコンデンサ側に流れれば完璧な絶縁体といえますが、実際にはそうはならず、一部が抵抗側に流れるため、そこで熱が生じて損失となります。

この損失を誘電体損といい、上図の回路図から、誘電体損Plossを式にすると次のように表すことができます。上図が1相あたりの等価回路なので、三相回路全体で考えて係数3となっています。

ここで、抵抗を流れる電流とコンデンサを流れる電流の位相差は90°であり、誘電正接は次の式で表されます。

誘電体損Plossの式と誘電正接tanδの式を見比べるとわかる通り、誘電正接が大きいほど損失も大きくなるので、損失を小さくするためには誘電正接を小さくすることが求められます。

以上から、選択肢(1)の記述が誤りなので、(1)が正解となります。

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