電験三種 R3年 機械 問1 問題と解説

 問 題     

次の文章は、直流電動機に関する記述である。ただし、鉄心の磁気飽和、電機子反作用、電機子抵抗やブラシの接触による電圧降下は無視できるものとする。

分巻電動機と直巻電動機はいずれも界磁電流を電機子と同一の電源から供給できる電動機である。

分巻電動機において端子電圧と界磁抵抗を一定にすれば、負荷電流が増加したとき界磁磁束は( ア )、トルクは負荷電流に( イ )する。

直巻電動機においては負荷電流が増加したとき界磁磁束は( ウ )、トルクは負荷電流の( エ )に比例する。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  •  ア    イ    ウ   エ
  1. 一定で  比例   増加し  2乗
  2. 一定で  反比例  一定で  1乗
  3. 一定で  比例   一定で  2乗
  4. 増加し  反比例  減少し  1乗
  5. 増加し  反比例  増加し  2乗

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説    

まずは( ア )と( イ )を含む文章(分巻電動機)について解説します。

分巻電動機は、界磁回路と電機子回路とが並列に接続されています。等価回路を描くと以下のような感じです。

上図から、端子電圧と界磁抵抗を一定にすれば、界磁磁束も一定となることがわかります。もし負荷電流が増加したとしても、界磁側の電圧V[V]と抵抗Rf[Ω]が一定なら界磁電流If[A]は不変であり、界磁磁束に影響がありません。

よって、( ア )には「一定で」が入ります。

また、分巻電動機の電流とトルクとの関係は以下のようなグラフで表すことができます。

上のグラフの青色がトルク曲線です(この問題では使いませんが、赤色が回転速度特性です。参考までに)。このグラフを見てもわかる通り、負荷電流がある程度小さい間は、トルクは負荷電流にほぼ比例します。電流がある程度以上だと電機子反作用による影響が現れて、線が寝るような感じに推移します。

この問題では、問題文に「電機子反作用は無視できる」とあるので、( イ )には「比例」が入ります。

続いて、( ウ )と( エ )を含む文章(直巻電動機)について解説します。

直巻電動機は、界磁回路と電機子回路とが直列に接続されています。等価回路を描くと以下のような感じです。

上図より、この回路では負荷電流も界磁電流も同じなので、負荷電流が増加すれば界磁電流も増加するため、結果として界磁磁束は増加します。よって、( ウ )には「増加し」が入ります。

また、トルクは、(負荷電流に比例する)界磁磁束と負荷電流との両方に比例するため、要するにトルクは負荷電流の2乗に比例することになります。よって、( エ )には「2乗」が入ります。

参考までに直巻電動機のトルク特性を表すグラフを以下に示します。下図を見ると、青色の線がトルクと電流との関係であり、トルクが電流の2乗となっていることがわかります。

以上から、( ア )には「一定で」、( イ )には「比例」、( ウ )には「増加し」、( エ )には「2乗」が入るので、正解は(1)です。

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