電験三種 R1年 理論 問18 問題と解説

 問 題     

図1は、二重積分形A-D変換器を用いたディジタル直流電圧計の原理図で、ある。次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a) 図1のように、負の基準電圧-Vr(Vr>0)[V]と切換スイッチが接続された回路があり、その回路を用いて正の未知電圧Vx(>0)[V]を測定する。

まず、制御回路によってスイッチがS1側へ切り換わると、時刻t=0sで測定電圧Vx[V]が積分器へ入力される。その入力電圧Vi[V]の時間変化が図2(a)であり、積分器からの出力電圧Vo[V]の時間変化が図2(b)である。ただし、t=0sでの出力電圧をVo=0Vとする。

時刻t1におけるVo[V]は、入力電圧Vi[V]の期間0~t1[s]で囲われる面積Sに比例する。積分器の特性で決まる比例定数をk(>0)とすると、時刻t=T1[s]のときの出力電圧は、Vm=( ア )[V]となる。

定められた時刻t=T1[s]に達すると、制御回路によってスイッチがS2側に切り換わり、積分器には基準電圧-Vr[V]が入力される。よって、スイッチS2の期間中の時刻t[s]における積分器の出力電圧の大きさは、Vo=Vm-( イ )[V]と表される。

積分器の出力電圧Voが0Vになると、電圧比較器がそれを検出する。Vo=0Vのときの時刻をt=T1+T2[s]とすると、測定電圧はVx=( ウ )[V]と表される。

さらに、図2(c)のようにスイッチS1、S2の各期間T1[s]、T2[s]中にクロックパルス発振器から出力されるクロックパルス数をそれぞれN1、N2とすると、N1は既知なのでN2をカウントすれば、測定電圧Vxがディジタル信号に変換される。

ここで、クロックパルスの周期Tsは、クロックパルス発振器の動作周波数に( エ )する。

上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(b) 基準電圧がVr=2.0V、スイッチS1の期間T1[s]中のクロックパルス数がN1=1.0×103のディジタル直流電圧計がある。この電圧計を用いて未知の電圧Vx[V]を測定したとき、スイッチS2の期間T2[s]中のクロックパルス数がN2=2.0×103であった。

測定された電圧Vxの値[V]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 0.5
  2. 1.0
  3. 2.0
  4. 4.0
  5. 8.0

 

 

 

 

 

正解 (a)-(1), (b)-(4)

 解 説    

(a)

( ア )に関して、問題文に「Vo[V]は、0~t1[s]では面積Sに比例する」ということが書かれています。問われているのはVmですが、これは図2(b)を見てもわかるようにVoの最大値のことなので、Vmも面積Sに比例するといえます。

また、図2(a)から、面積SはVxとT1の積で求めることができるので、VmはVx×T1に比例します。よって、( ア )には「kVxT1」が入ります。

( イ )に関して、0~T1[s]ではVoは図2(a)の面積Sに応じて大きくなっていきました。T1~T2[s]では、Voは下図に示す面積S’に応じて小さくなっていくことが図2(b)から読み取れます。

上図より、面積S’はVrと(t-T1)の積となるので、( イ )には「kVr(t-T1)」が入ります。

( ウ )で、Vo=0Vとなるのは、図2(a)に示される正の側の面積(VxT1)と負の側の面積(VrT2)とが等しいときです。よって、次のように計算することができます。

よって、( ウ )には「T2Vr/T1」が入ります。

( エ )では周期Tsと周波数fの関係が問われていますが、周波数というのは1秒間に何周期分あるかということを示すパラメータなので、周期Tsと周波数fとは逆数の関係となります。

よって、( エ )には「反比例」が入ります。

以上から、正解は(1)だとわかります。

(b)

問われているのはVxであり、(a)の( エ )で以下の式を得ているので、これを利用してVxを算出するのがわかりやすいと思います。

ここで、Vrは問題文で与えられている一方、T1とT2は未知数ですが、クロックパルスというのは一定のリズムで刻んでいる信号なので、クロックパルス数N1とN2の比が、そのままT1とT2の比ということになります。

よって、Vxは以下のように計算することで求められます。

以上から、正解は(4)です。

コメント