電験三種 H30年 電力 問4 問題と解説

 問 題     

次の文章は、我が国の原子力発電所の蒸気タービンの特徴に関する記述である。

原子力発電所の蒸気タービンは、高圧タービンと低圧タービンから構成され、くし形に配置されている。

原子力発電所においては、原子炉又は蒸気発生器によって発生した蒸気が高圧タービンに送られ、高圧タービンにて所定の仕事を行った排気は、( ア )分離器に送られて、排気に含まれる( ア )を除去した後に低圧タービンに送られる。

高圧タービンの入口蒸気は、( イ )であるため、火力発電所の高圧タービンの入口蒸気に比べて、圧力・温度ともに( ウ )、そのため、原子力発電所の熱効率は、火力発電所と比べて( ウ )なる。また、原子力発電所の高圧タービンに送られる蒸気量は、同じ出力に対する火力発電所と比べて( エ )。

低圧タービンの最終段翼は、35~54インチ(約89cm~137cm)の長大な翼を使用し、( ア )による翼の浸食を防ぐため翼先端周速度を減らさなければならないので、タービンの回転速度は( オ )としている。

上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

   (ア)  (イ)  (ウ)  (エ)      (オ)

  1. 空気 過熱蒸気 高く 多い  1500min-1又は1800min-1
  2. 湿分 飽和蒸気 低く 多い  1500min-1又は1800min-1
  3. 空気 飽和蒸気 低く 多い  750min-1又は900min-1
  4. 湿分 飽和蒸気 高く 少ない 750min-1又は900min-1
  5. 空気 過熱蒸気 高く 少ない 750min-1又は900min-1

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説    

原子力発電所のタービンに関する問題ですが、文中でたびたび火力発電所のタービンと比較しているため、まずは原子力発電所と火力発電所の発電効率を念頭に入れて考えるとわかりやすいと思います。

原子力発電所の発電効率は約30%、火力発電所の発電効率は約40%です。よって、発電効率の面からいえば、火力発電所のほうが優れているといえます。これを踏まえて、問題文の穴埋めを考えていきます。

( イ )の説明をしてから( ア )を見たほうがわかりやすいと思うので、先に( イ )の解説をします。

( イ )は「過熱蒸気」または「飽和蒸気」となりますが、飽和蒸気というのは沸点に達した水が水蒸気になったものです。過熱蒸気とは、飽和蒸気をさらに過剰に熱して高温にした蒸気のことです。

火力発電所では大きな熱量を持つ過熱蒸気を用いるために高効率を実現している一方、原子力発電所ではあまり温度の高くない飽和蒸気を使います。よって、( イ )には「飽和蒸気」が入ります。

ここで( ア )に戻りますが、飽和蒸気は沸点よりもいくらか温度が高いだけなので、高圧タービンで仕事をすると、温度が下がって一部の蒸気は水滴に変わってしまいます。この水滴が機器を腐食させては良くないので、湿分分離器を使って湿分を除去してから、低圧タービンへ蒸気を送る必要があります。

よって、( ア )には「湿分分離器」が入ります。

( ウ )について、原子力発電所では飽和蒸気を、火力発電所では過熱蒸気を用いていることから、原子力発電所での蒸気のほうが圧力・温度ともに「低く」なります。それに応じて、熱効率も「低く」なります。

( エ )で、原子力発電所のほうが発電効率が低い分、同じ出力を得ようとするとたくさんの蒸気が必要となります。よって、ここには「多い」が入ります。

( オ )では、蒸気タービンの回転速度には1500,1800,3000,3600[min-1]の4パターンがあります。このうち大きいほう2つ(3000と3600)は火力発電所の蒸気タービンに使われ、小さいほう2つ(1500と1800)は原子力発電所の蒸気タービンに使われます。

つまり、( オ )には「1500min-1又は1800min-1」を入れるのが正しいですが、これはややマイナーな知識かもしれません。もし知らなくても、( ア )~( エ )を適切に選べれば正解の選択肢は一つに絞れるため、あまり気にしなくてもよいと思います。

以上から、正解は(2)です。

コメント