電験三種 H29年 理論 問13 問題と解説

 問 題     

図1は、固定バイアス回路を用いたエミッタ接地トランジスタ増幅回路である。図2は、トランジスタの五つのベース電流IBに対するコレクタ-エミッタ間電圧VCEとコレクタ電流ICとの静特性を示している。このVCE-IC特性と直流負荷線との交点を動作点という。図1の回路の直流負荷線は図2のように与えられる。

動作点がVCE=4.5Vのとき、バイアス抵抗RBの値[MΩ]として最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

ただし、ベース-エミッタ間電圧VBEは、直流電源電圧VCCに比べて十分小さく無視できるものとする。なお、RLは負荷抵抗であり、C1、C2は結合コンデンサである。

  1. 0.5
  2. 1.0
  3. 1.5
  4. 3.0
  5. 6.0

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説    

まず、問題の図1がちょっと複雑であるので、これを簡略化した等価回路に描き直してから考えます。2つのコンデンサは回路としてつながっていないので考えなくてよく、また、トランジスタの部分は図1に記入されているようにVBEとVCEという2つの直流電源に分けます。

すると、図1は下図のように描くことができます。

ちなみに、上図では一応VBEを記入しましたが、問題文にここは無視できると書いてあるので、ただの導線と見なして構いません。よって、上図の緑色の線で示した2つの閉回路についてキルヒホッフの第二法則を適用すると、以下の2式ができあがります(VBEは無視しています)。

最終的に求めたいのは①式に含まれているRBの値ですが、それを知るには、VCCとIBの値が必要となります。IBは図2から読み取ることができ、問題文で動作点のVCEが4.5[V]と与えられているため、下図のように線を引いて、VCE=4.5のときのIBの値を読めばよいので、IB=6[μA]となります。

一方、VCCを求めるには②式を使います。

その前に確認しておきたいことは、この回路において、トランジスタ周りのパラメータ(IB、IC、VCE)は図2を見てもわかる通り、場合によって値の変わる変数ですが、VCCはただの直流電源なので、これは定数です。

よって、問題文では動作点がVCE=4.5と定められていますが、動作点以外のときでも(VCEが4.5以外のときでも)VCCの値は変わらないことになります。

以上を踏まえて図2の直流負荷線を見ます。

ここにはICとVCEの関係が載っていますが、このうち一方が0となる点を使えば、それを上記②式に代入することで、VCCを求めることができます。つまり、図2の直流負荷線でIC=0であるとき、VCE=9[V]と読めるので、これを②式に代入すると、

と計算できます(ちなみに、直流負荷線でVCE=0となる点を使っても、IC=3がわかるだけでRLがわからないので、①式は解けません)。

以上でIB、VCCの値がわかったので、これを①式に代入すれば、求めるRBの値を算出することができます。

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