電験三種 H29年 機械 問13 問題と解説

 問 題     

誘導加熱に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 産業用では金属の溶解や金属部品の熱処理などに用いられ、民生用では調理加熱に用いられている。
  2. 金属製の被加熱物を交番磁界内に置くことで発生するジュール熱によって被加熱物自体が発熱する。
  3. 被加熱物の透磁率が高いものほど加熱されやすい。
  4. 被加熱物に印加する交番磁界の周波数が高いほど、被加熱物の内部が加熱されやすい。
  5. 被加熱物として、銅、アルミよりも、鉄、ステンレスの方が加熱されやすい。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説    

誘導加熱の「誘導」は、電磁誘導のことです。コイルの中に金属などの導電体を入れ、交流電源に接続して電流を流すと、交番磁界が発生することにより渦電流が流れます。

この現象が電磁誘導であり、こうして生じた渦電流がコイル中の導電体(金属など)を通過する際には、渦電流損やヒステリシス損が発生します。これらの損失は熱となりますが、この熱を利用した加熱方式が誘導加熱です。

家庭用ではIH調理器などに、工業的には溶接などにこの方式が用いられています。

よって、(1)と(2)はどちらも正しい記述です。

(3)に関して、透磁率が高いというのは磁化されやすいという意味なので、透磁率が高い被加熱物のほうが電磁誘導が起こりやすく、誘導加熱には有利です。よって、これも正しい記述です。

(4)は、交番磁界の周波数が高いか低いかによって、被加熱物の表面が加熱されるか内部が加熱されるかが問われています。

交番磁束は被加熱物の表面近くに集まり、渦電流も被加熱物の表面付近に集中するという性質があります。この特徴を表皮効果といい、電流の表面集中度を示す指標を電流浸透深さといいます。

電流浸透深さは、交番磁束の周波数が高ければ浅く、周波数が低ければ深部まで加熱することができます。

よって、(4)の記述が誤りで、周波数が「低い」ほど、被加熱物の内部が加熱されやすくなります。

これは知識として知っていればそれまでですが、イメージとしては赤外線と紫外線の関係とリンクさせて覚えることが可能です。

つまり、波長の長い(=周波数が低い)赤外線は、被加熱物の深部にまで届いてたとえば身体を温めたりすることができます。一方、波長の短い(=周波数が高い)紫外線は、物の表面に付いた菌を殺菌したり、人が浴びすぎると皮膚がんの原因になったりと、表面に対する作用が主です。

(5)について、鉄やステンレスは磁石にくっつき、銅やアルミは磁石にくっつかないことを考えると、鉄やステンレスのほうが透磁率が高いと予想できます(実際、そうです)。よって、鉄やステンレスのほうが誘導加熱が起こりやすいので、これは正しい記述です。

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